今月の会報(№176、2024年6月)に、今後の治療薬開発に係る興味深い記事がありました。
友の会が毎年実施している国会請願集会での医療講演の原稿です。
講師は、医学博士の秋澤俊史先生で、演題は「パーキンソン病の根本治療薬開発を目指して」です。
既に会報をお読みの方もいらっしゃるかと思います。
記事をそのまま引用したいところですが、著作権の関係もありますので、ざっくりと要約します。
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【専門用語解説】
*ペプチド: 数個から数十個のアミノ酸からできているもの。アミノ酸が結合してペプチドとなり、もっと多数のアミノ酸が結合したらタンパク質となる。パーキンソン病の原因となるアルファシヌクレインは140個のアミノ酸でできているタンパク質である
*Syn61-84: 140個のアルファシヌクレインの凝集の核となる61番目から84番目の24アミノ酸からなるペプチドの名前
*LYZ-A3: パーキンソン病治療薬候補のペプチドの名前
*YS-RD11: パーキンソン病治療薬候補のペプチドの名前
・アルファシヌクレインというタンパク質が脳内に蓄積していって発症するのがパーキンソン病。
■アルファシヌクレインの凝集の核の同定とモデルマウスの作成
・パーキンソン病治療薬開発に障害となっていることとして、パーキンソン病モデルマウスが開発されていないことがあった。
・まず、アルファシヌクレインの凝集の核となる部分を見つけることとし、構成される61番目から84番目のペプチド(Syn61-84)が凝集の核となることが確認できた。このペプチドを正常マウスの脳内に投与すると、たった一回の投与でパーキンソン病の症状を呈することが分かった。
・次に、このSyn61-84の凝集を阻害するペプチドを見つける作業を行った。
保有するペプチドの中からアルツハイマー病研究で有望と思われたペプチドを150種類選択し、凝集抑制作用を示すペプチドを見出した。さらに詳しく調べて3種類の有望なペプチドを見つけた。そのうち二つは、凝集抑制作用とともに凝集体を乖離(溶かす)する作用を持つもの(LYZ-A3、YS-RD11)で、他の一つはSyn61-84を分解する酵素ペプチド(Catalytide)である。
■凝集抑制・乖離促進ペプチドの同定
・凝集抑制・乖離促進作用を持つペプチドとしてLYZ-A3とYS-RD11の2種類を同定できた。検討結果は、いずれも発症初期から発症後期まで効果を示す可能性を示しており、ともにパーキンソン病の治療薬となり得ることが期待できた。
■治療効果:PD発症後のモデルマウスへのペプチド脳室内投与による効果
・PD発症後のモデルマウスに、LYZ-A3あるいはYS-RD11を脳室内投与し運動機能と認知機能の回復を確認したところ、ペプチド投与1週間で回復傾向が認められ、2週間後には正常マウスより運動機能と認知機能ともに回復していることが確認できた。
■経鼻投与による効果:PD発症後のモデルマウスへのLYZ-A3経鼻投与による効果
・臨床適用を考え、特に効果が高かったLYZ-A3を用いて経鼻投与法で治療効果を確認したところ、運動機能の改善効果が認められ、十分臨床応用できる可能性があることが期待できる。
■酵素ペプチド(Catalytide)の検討
・酵素ペプチド(Catalytide)に関しても先の凝集抑制・乖離促進ペプチド(LYZ-A3)と同様の作用を確認している。残念ながら、知的財産の確保の申請準備中なので公表することはできない。LYZ-A3はアルツハイマー病治療薬のレカネマブと同じ様な機序で作用するペプチドであるが、酵素ペプチド(Catalytide)は加水分解してバラバラにすることで無毒化する。安全性や投与の簡便さはLYZ-A3と同様であり、根本的な治療薬となり得ることが期待できる。1年以内には知財の確保を行い公表し、2年以内には臨床試験が開始できるように頑張る。
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以上のような内容でした。
だいぶ端折りましたので、分かりにくかったでしょうか。
まず、PDのモデルマウスの開発。
次に、アルファシヌクレインの凝集抑制・乖離促進作用をもつペプチドの同定。
そして、その効果検証が行われたようです。
治療薬候補の3種類のペプチドのうち、「酵素ペプチド」が集中的に進められているようです。
一刻も早い実用化を期待したいです!!