先生に向けて下記の内容を先日提出しました。

この方向性で卒論書く予定。



短期的意思決定による幸福バイアスと少子化

  ーsystem1/2モデルによる行動経済学的分析ー

動機

 私がこの研究を志す背景には、シングルマザーとして二人の子どもを育ててきた経験がある。経済的に恵まれているわけではなかったが、受験勉強や塾などの学校外教育に多額の費用をかけなくても、子どもたちはそれぞれの道で幸せに成長し、現在は一流企業への就職や海外大学への正規留学を実現している。この経験を通じて、いわゆる「教育費負担」や「受験競争」が本当に不可避なものなのか、そしてなぜ多くの人がその不安に駆り立てられてしまうのかという疑問を抱くようになった。
  現代の日本では、「子ども一人にかかる教育費の高さ」が少子化の主要因として考えられている。しかし、教育費の不安は実際の金銭的困難から生じているのか、それとも社会的な比較意識や不安マーケティングなど、心理的な要因に強く影響されているのかを冷静に見つめ直す必要があると感じている。


 そこで近年取り上げられている情報ギャップの問題を拡大解釈できるのではないかと考えた。情報ギャップは日本だけでなく世界中で例がみられる。充分な知識を持ち合わせないために実際には支援の対象となるのに申請をせずに、大学費用は高額だと決めつけて検討する前に断念する世帯もあるという調査結果もある。アメリカの研究ではあるが、多くの親が学費については過大推計し学生支援については過少推計していたという研究結果もある。費用や手間が掛かるものだとイメージしてしまい予めその費用を用意できるまでは子育てをしないという選択をすることは少子高齢化などの社会的問題だけではなく、生き方の幅を狭めているのではないかと考えた。


 特に近年マスコミやSNSでは「年収1千万円世帯でも2人の子供がいたら余裕がない」だとか「老後を考えて20代から積立てるべきだ」などと将来不安をあおる文言が多く飛び交っている。
  私はもともと「行動経済学」に興味があったことと、先日読んだダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』を通して、人間の意思決定がいかに直感的で、時に非合理的な「思考の癖」に左右されるかということに深い興味を持った。このことから、教育に関する親の判断には、システム1による短期的安心の追求 「周囲に遅れたくない」「少しでも良い環境を与えたい」という感情的な反応 が大きく影響しているのではないかと考える。一方で、システム2を働かせた冷静な長期思考によって、教育への過剰投資を抑え、子どもと過ごす時間や地域社会とのつながりを重視する選択もあり得るのではないかと考えた。
  こうした観点から、私は「なぜ親たちは教育費への不安を抱き、過剰な競争に巻き込まれるのか」という心理的・社会的構造を行動経済学の視点で分析し、教育と幸福の関係を問い直したいと考えている。個人的な体験と理論的関心を結びつけることで、「親と子が共に豊かに生きるための新しい選択」を考える研究としたい。


目的

 この研究の一番の目的は、未来に対する教育費の不安や老後の不安によって現在を犠牲にしたり望むことを諦めたりするのではなく、明るい未来に向けて今を大事にするポジティブな長期思考を持って子育ても生活の一つの選択肢として誰もが選べる経済制度を示すことにより、社会的厚生を最大化することである。

 

 また、単に理論を提示するだけでなく、行動経済学の知見を活かして、人々が自発的により良い選択を取れるような制度設計を考案したい。具体的には、子どもと親が共に長期的な幸福を見据えた意思決定を行えるような社会的仕組み、例えば地域教育や時間の使い方を再評価できる支援制度の提案を目指す。




仮説

仮説1;教育費に対する不安は現実の所得や生活水準よりも、メディアやSNSで仕入れた情報に対する「比較意識」に強く影響されている。すなわち、教育費不安は経済的要因よりも認知バイアスに影響されているのではないか。

仮説2;「子育ては大変」「自由がなくなる」と思い込み、身近なゲームなどの娯楽は楽しいとおもいこんでいるのは、営利企業のマーケティングやネガティブ情報の強調によって生じるヒューリスティックスが存在しているのではないか。

仮説3;子育て・教育に関する意思決定においてsystem2による塾考を促すと短期的負担ではなく長期的幸福を重視する選択肢が増えるのではないか。


具体的な研究方法

文献研究 行動経済学・教育経済学・ゲーム理論の先行研究を整理

データ分析 OECD PISA ,UNICEF Report Card , 総務省統計などから教育費支出・幸福度・出生率の相関を比較、把握

子育て世帯・将来子育て世帯へのアンケート




ー書籍ー

ソースティン・ヴェブレン「有閑階級の理論」/岡田章「ゲーム理論入門」/宇沢弘文「社会的共通資本」/伊藤元重「ビジネス・エコノミクス」(第2版)/ジェームズ・J・ヘックマン「幼児教育の経済学」/苅谷剛彦「教育改革の幻想」/ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」/広井良典「コミュニティを問い直す」/井出栄策「幸福の増税論」


ー記事ー

教育費負担と進路選択における学生支援のあり方 大総センターものぐらふ14

https://www.he.u-tokyo.ac.jp/content/files/0d4892fb98aad148ff88df3de9387f72.pdf?utm_source=chatgpt.com


UNICEF Innocenti Report Card 19

https://www.unicef.org/innocenti/reports/child-well-being-unpredictable-world?utm_source=chatgpt.com


OECD PISA2022

https://oecdstatistics.blog/2025/04/08/from-data-to-action-enhancing-childrens-lives-through-better-insights/?utm_source=chatgpt.com


Japan Country Note(PISA 2018)

https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/about/programmes/edu/pisa/publications/national-reports/pisa-2018/featured-country-specific-overviews/PISA2018_CN_JPN.pdf?utm_source=chatgpt.com


Quantifying Educational Competition: A Game-Theoretic Model with Policy Implications

https://arxiv.org/pdf/2412.10974




「少子化」 問題のジェンダー分析  目黒依子・西岡八郎 (J. of Population Problems) 56-4 (2000. 12) pp. 38~69

https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/15648403.pdf


東京都の少子化対策 2024 附属資料

https://www.kodomoseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kodomoseisaku/syousikataisaku2024_siryo02



現代日本の結婚と出産-第16回出生動向基本調査 国立社会保障・人口問題研究所

https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_ReportALL.pdf