とりあえず東北 2部 | 家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

なれない環境でまさにパプアニューギニアに来ている感じです。
他のページで小説書いてます。
よかったら遊びに来てください。

https://ameblo.jp/yuki-matuda

ルートはこうだ。
6時、レンタカーで東京出発。
そうなのです。新幹線→現地でレンタカーを借りることをやめ、一気にレンタカーで岩手に行こうという計画である。
東京6時発→盛岡13時着、昼食わんこそば→盛岡市内観光。
盛岡から少し離れた繁華街ビジネスホテルチェックイン。
夕方まで休憩。
夜、もちろん冷麺と妻の好きな焼肉。繁華街で適用なショットバーで一杯。
 
翌日、遠野へ向かう。遠野の町並みを満喫し
カッパに遭遇?した後、宮沢賢治めぐりをする。
花巻デパートで巨大ソフトクリームで妻が驚く頃15時が過ぎている。
2泊する花巻温泉宿に向かう。
温泉で体を休めたら旅館の食事を堪能。
夏の東北を肌で感じながら外でタバコをくゆらしながら就寝。
 
朝、ゆっくり起きた妻の準備が整うのを待ち、中尊寺に向かう。
金色堂を拝観したあと弁慶ゆかりの場所を周り、地元おすすめのステーキ店で昼食。
(妻はとにかく肉が好き)
そして毛越寺から始まり回れるだけ平泉を堪能し、18時温泉宿に戻る。
最後の夜を妻と話しながら過ごし就寝。
翌日、一気に東京に戻り、翌日私は一日寝ている。
とこんな感じである。
 
そして準備、手配、予約も万全に翌日夜を迎える。
6時出発のため夜10時には就寝した。十分である。
がここで想定外なことが発生した。寝られないのである。
仕方がないのでキッチンに行き、お酒が残らない程度にショットグラスでウイスキーを飲んだが目が冴えている。
なぜだ?私は小学生か?自身に突っ込んでいるうちに時間は残酷に過ぎていく。
残酷といえば天使。これってエヴァ?いかん眠らねば。
そして私の脳裏にはこんなことが浮かんだ。
私がもし運転中、寝てしまったら妻に取り返しのつかないことになってしまう。
そう思うとますます寝れなくなるのが人間。不思議な生き物だ。
とりあえず私は目をつぶり続けた。
そして気がつくと携帯のアラームが鳴り始めた。
私はスクロールでアラームを止め思った。私は果たして眠ったのだろうか?
私は妻より少し早く家を出てレンタカー屋に向かった。
手続きを済ませ自宅まで車で戻った。
妻は予定通りに玄関に荷物をもって待っていた。
まあ、大丈夫だろうそう自分に言い聞かせていた。
 
「ねえ旦那さん、CDかけていい?」
「ええいいですよ。」
車が首都高を乗る頃にはスピーカーからテクノポップが流れ出した。
すこし小雨が舞う箱崎ジャンクションはすごく空いていた。
「渋滞していない箱崎ジャンクションなんて初めてですね」
「そんなにここ混んでるの?」
お盆前のズレた休日の朝は雨も手伝い私に初めての経験をもたらした。
そしてそのまま東北道に向かう。
東北道にのり、岩槻インターを過ぎた。
「この先はまさに私にとって未知の道ですね」
「なんで?」
「私はこの先走ったことないんですよ」
そんな会話を交わしながら妻がトイレに行くというのでパーキングに入った。
そして私はここで2度目の失敗を犯す。
妻を待つ間、売り場を見回したときあるものが目に入った。
目覚ましドリンクである。
私は少しの気だるさを気にしていたため自然と手が伸びてしまった。
ドリンクを一気に飲み干し、妻を待った。
そして妻が姿を現し、私に言った。
「何か飲み物買う?」
「じゃあ、アイスコーヒー買ってください」
「え?旦那さんがコーヒー飲むの?」
「眠気覚ましにですよ」
そしてパーキングを後にした。
そしてしばらく順調に東北道を走行していた。
雨は次第に強くなるも妻と二人きりの社内にご機嫌な音楽がながれ
久々の車の運転で私もリラックスしてきた。
そして栃木に入ると妻に伝えた。
「やっと栃木に入りましたよ」
「結構早いのね。もう東北つきそうじゃない?」
「そうですね。ナビは盛岡1230分ですから予定より早く着きそうですね」
「飛ばさないでよ。雨も降っているんだから」
「大丈夫。わかってますよ」
雨の降る東北道は周囲に私たちの車をたまに抜いていく車くらいしか目にしないほどすいていた。
「この先に何かよからぬものがあるんですかね?」
「なんで?」
「さっきから車が全然走っていないですからね。」
そして2度目のパーキングに寄った。
そしてここで私は第3のミスを犯す。
頭もさえ、順調さを私は疑った。
この先3時間後もし眠くならない保証はない。
体調も良好ではあったが念には念を入れる意味でまた目覚ましドリンクに手を出してしまった。
しかもこの時なにを買うのか迷ったのでとりあえず両方買い2本飲んでしまった。
その姿を見た妻が私に言った。
「旦那さん、そんなに飲んで大丈夫?」
「大丈夫私は不死身ですから」
「そんなお腹しているのに不死身なの?」妻は笑って言った。
バカンスはなぜ人を大胆にさせるのだろうか?それともこれが人間の本質なのだろうか。
そしてこの後、私の体は少しずつ蝕まれて行くのであった。
それは車が福島に入った頃、私の体に異変が起こった。
軽い疲労感が襲ってきた。
これを私は睡魔だと感じた。
「知恵さんすこし眠くなってきたのでパーキングで休憩をとりますね」
そう言うと目を閉じたまま妻はハイと返事をした。
そしてパーキングに入り車を止め仮眠をとることにし目を閉じた。
しかし目を閉じてもねることができない。
なんだか昨日の布団の中にいるようだ。
そのうち眠くなるだろうと思い目をとじ続けても頭の中は冴えに冴えていた。
時間は30分を過ぎても何も休まらない。
ナビに目を向けると盛岡予定到着時間は13時を過ぎていた。
そして私は強行手段に出ることにした。
「出発します」
そして東北道に戻り走り出すと体調はさらに悪化した。
東京時より早く動くワイパーは私の体調をさらに悪化させるように思えた。
横で心配する妻の姿を見て私は絶対事故を起こすまいと気をしっかり持つよう務めるも
気分はその逆を推し進めてゆく。
そしてまたパーキングに入って車を止めた。
「ねえ、旦那さん電車で帰る?」妻からの提案である。
それを聞いて目を閉じる私は言った。
「ここ高速ですよ。車もここに置いていくわけには行かないじゃないですか」
「お金払えばなんとかしてくれるんじゃない?」
私はその言葉を聞いて妻に大変申し訳なく思った。
妻を心配させまいと思って計画し、そして無茶に飲んだドリンク。
すべてが私の判断である。私は一体何をしているのだろうか?
私はどうしてもせめて14時までに盛岡につこうと考えた。
そして車を走らせ、またワイパーを見つめた。
しかし気合などなんの足しにもならず、私の気を持たせるのは
次のパーキングまでの距離を示すナビの数字だった。
後10kmで休める。あと5kmでパーキングに入れる。
後1kmもうパーキングだ。
時には頑張ってひとつパーキングを飛ばして強行したりもした。
この時私は思った。
東北道って20km起きにパーキングがあるんだな。これはとてもありがたかった。
そして私はもう入る回数を数えなくなったパーキングで活動限界を迎えていた。
心配して気を使う妻にこのままでまずいと私は最後の手段を使うことにした。
裏コード。
「まだ大丈夫ですよ。」大量の汗を拭いながら私はパーキングを2つ飛ばしてやろうと思い車を走らせた。暴走である。
しかし人間はビーストにはなれず苦しさが増すばかりである。
この時の苦しみは昔車を運転していて突然高熱を出した時より辛かった。
そして活動限界をとうに超えた私の目に見えたものそれは仙台インターの表示だった。
そして私は口を開いた。
「仙台でおります」
そう言うと妻はにこりと微笑んだ。