今回は宇夫須那神社(うぶすなじんじゃ)。一宮市島村上深田84。
訪問日:2009年12月18日
561句は次の通りである。
宇夫須那に山茶花咲けり迷うなり (桐山芳夫)
神社の近くで山茶花が咲いているのに出合った。ところが、宇夫須那神社は二カ所あるという。同じ島村にある村社で、もう一方は宇夫須奈神社。「那」と「奈」の一字違いだが、どちらも「うぶすなじんじゃ」と呼称し、かつ、式内社としている。ややこしくてたまらない。
562句は次の通りである。
村内に三社のありて赤とんぼ (桐山芳夫)
島村村内に前記したように「うぶすなじんじゃ」が存在する。ところが前々回に見た
若栗神社(わかぐりじんじゃ)も島村に鎮座する。そして若栗神社は旧県社に格付けされていた。
563句は次の通りである。
うぶすなは産屋に由来冬の星 (桐山芳夫)
宇夫須那は産屋(うぶや)から由来しているという。当社の祭神は余曽多本比売命(よそたほびめのみこと)で、第五代孝昭天皇のお后。その御子が若栗神社の祭神天押帶日子命(あめおしたらしひこのみこと)である。したがって、両者の関係は母と子の関係になるわけである。
564句は次の通りである。
本殿は冬に沈静音もせぬ (桐山芳夫)
当社は鳥居をくぐると、すぐ目の前が透垣(すいがい)と本殿。コンパクトで落ち着いた神社である。廃絶の危機に追い込まれたのを、「尾張式内実訪書」によると、当地の旧家で氏子総代の兼松氏が私財を投げ打って存続に力を注いだ功績を特記している。
565句は次の通りである。
山茶花咲く福寿龍神とふ一社有り (桐山芳夫)
当社には境内社として福寿龍神という、やや変わった名の神社がある。福寿は長命で縁起のよい神様。また、龍神は確か水の神様。当地はたびたび言及しているように、木曽川の度重なる氾濫に苦しめられたが、同時に水の恩恵も受けて来た。
(2022年5月2日)