第168句は次の通りである。
      立春や人々鈴なりお伊勢さん        (桐山芳夫)
  立春は2月4日頃。もう5、6年ほど前になろうか。立春の頃に伊勢神宮詣でに出かけたことがある。もう2月になったのだから、さほどお伊勢さんはお正月ほどではなかろう、と思って出かけたら、とんでもはっぷん。大変な人々の混みよう。宇治橋を渡る頃にはさほどでもなかったが、本殿の石段を上がる時は人々で一杯。やはりお伊勢さんの人気の高さは桁外れ。新型コロナのさなか、今年はどうだろう。

     第169句は次の通りである。
        仰ぎ見る空より落下春の雨        (桐山芳夫)
  ベランダに出て、仰ぎ見るとひっきりなしに雨が落ちてくる。昨年の立春前後に作句したもの。真冬と異なって、ひっきりなしに落ちてくる雨粒はどこか春めいていて、空も明るく見えた。

     第170句は次の通りである。
          木曽川を越えて目指すは梅ばやし        (桐山芳夫)
  梅の最盛期は2月から3月。私が車で毎年相棒と通ったのは岐阜市の梅林公園。1300本ほどの梅が咲き、梅祭りが行われる。私自身は梅祭りの時期は避けて、ゆったりした気分で見られるときに数回通ったものである。梅林公園は名古屋の東を名岐バイパスを北上した岐阜市にある。一宮市を通って木曽川を越えると十数分で到着する。そのワクワク感がたまらなかった。

     第171句は次の通りである。
          梅を指しにわか女性と立ち話        (桐山芳夫)
  梅林公園に限らないが、にわかに知り合った女性と色々立ち話をすることがある。「よくいらっしゃるんですか」「はい。ここの梅は種類が多いので好きなんです」といった類の、なんてこともない話題で。が、見知らぬ人と話すのは結構楽しいのである。

     第172句は次の通りである。
        梅ばやし目前にしてそろり足          (桐山芳夫)
  梅は白梅紅梅と色々あっていつまで見ていても見飽きない。自然にカメラ片手に足が止まる。梅はどこか引き締まった花で、もう何年も見てきた花なのに、やはりさっさと通り過ぎることが出来ない。

                ( 2021年1月16日)