第158句は次の通りである。
羽豆神社遠望遙かに海と島 (桐山芳夫)
私は160社に及ぶ尾張式内社をまわったが、やはり羽豆神社は最高ないし最も好きな一社。同社は、知多半島の先端部の師崎(もろざき)に鎮座する。正確には師崎からさらに海に突き出た羽豆岬に鎮座する。全山ウバメガシに覆われた珍しい山で、国の天然記念物に指定されている。三十八代天智天皇に由来するという最古級の神社。伊勢湾の海と島々を境内にしたような雄大な神社。
第159句は次の通りである。
恋路浜手取り合い眺む行くヨット (桐山芳夫)
私は渥美半島の先端をたびたび訪れているが、恋路が浜は忘れられない思い出。そこの灯台から見た沖ゆくヨットはまるで、絵画を見ているように美しい。実際に手と手を取り合ったわけではないが、二人で目にするヨットはメルヘンちっくである。
第160句は次の通りである。
病状と夢見る春は反比例 (桐山芳夫)
私は週二回ヘルパーにお世話になっている。本句は一年前の作句。「早く治ってあれもこれもしたいし、快方に向かっている気がする」とヘルパーに告げると、「病状と思いは反比例するよね」と言われてしまった。
第161句は次の通りである。
全面に菜の花咲くや知多の路 (桐山芳夫)
私は離島が好みなので、年に幾度も知多半島先端の乗船乗り場まで出かけていた。そこに行くとき、菜の花畑が目に付く。いよいよ早春が間近になってきた。という感慨が湧いてくる。
第162句は次の通りである。
春近し常滑始動急須買う (桐山芳夫)
早春の知多路といえば、常滑(とこなめ)の里を思い起こす。常滑は知多半島の西岸に位置する市で、壺や鉢などを量産してきた。急須などは常滑焼きとして有名。羽豆神社に向かう途中で、寄り、急須を求めたことがある。
( 2021年1月10日)