鏡は残酷である。

人の内面以外を全て、そのまま映し出す。

若い頃、鏡はただの鏡だった。

お化粧したり、髪をセットしたり、お洋服のコーディネートを考えたりするのに必要不可欠なもの、ではあったが、ただそれだけだった。


何気なく見ていた鏡を、特別に凝視するようになったのは30代後半だったように思う。
容貌の衰えを感じ始めた頃だ。

その頃、急に小皺、シミが増えた。 
しょっ中、鏡を見ては落ち込んだ。

そこで私は一念発起して、美容外科通いを始めた。
レーザーを当てると、シミ、シワが嘘のように消えた。

ありとあらゆる治療で、しばらくは美しい肌を死守した。笑

しかしそれもしばらくの事で、さすがに40代後半にもなると、治療をしてもなお、顔のたるみ劣化が気になるようになった。


ある日、私は美容院に出かけた。


鏡を見た瞬間、驚いた。
ほうれい線が目立ち、肌もくすんで疲れた顔をしている。

頭の中にカレンダーを思い浮かべた。
「ほうれい線にヒアルロン酸を打ったのはいつだったかしらん?」

考えてみると、そろそろヒアルロン酸を打つ時期であった。

それにしても、今朝も鏡を見たはずなのだ。
家の鏡、エレベーターの鏡、コンパクトの鏡🪞
その時には全く気づかなかった。

光の加減や、鏡自体の造り、もあるのだろう。

そう言えば、お洋服を試着したりする時に、細く見えたり、自分の脚よりも確実に長く見えたりする鏡もある。

思い起こすと、
前にもこの美容院で、目の下にクマが出来てる!と思ったことがあった。

そうなのだ。
ここの美容院の鏡は顔のアラがそのまま映し出される鏡🪞なのだ。
私が急にブサイクになった訳ではない。
鏡に映ったその顔が、私の本当の顔、なのである。

馴染みのスタッフさんにそれを言うと大笑いされた、笑
「すみません、うちの鏡が、ご迷惑をかけまして、笑」

それからと言うもの、私はこの美容院に来るたびに、厳しくお顔のチェックをするようになった。
悪い箇所を見つけると、次の日に美容外科に駆け込む。

自分の顔の衰えを自覚するのはとても辛いが、「老け顔発見器」を手に入れられて、私は逆に安心している、笑
ある意味、中々ラッキーだ、笑

スタッフさんには、「この鏡、買い替えないでね☝️」
と命令しておいた、笑

「鏡よ鏡、世界で一番ブサイクなのはだあれ?」

「それは鏡に映る、あなたです。」