お盆に東京に行っていたのだけれど
東京の帰りに、どうしても寄りたいところがあって。
昔、住んでいたところ。
元だんなさん（けんちゃん）の実家からも
私の実家からも
遠く離れた土地、関東に
約半年間住んでいた。
友達がひとりもいない土地。
誰も頼れるひとがいない土地。
けんちゃんと一緒に暮らしてはいたけれど
孤独だと”感じていた”土地。
それはきっと
「私ががんばらなければ」という思いがあったから。
そしてけんちゃんを
わかってあげられなかった
寄り添ってあげられなかった
そんな思いが残る土地。
それはきっと私が
わかってほしかった
寄り添ってほしかった
という思いがどこかにあった。
けんちゃんに？
違う。
私自身に。
私が私を孤独にしていた。
数年前にも一度寄ったことがあったけれど
今回もどうしても
ただ何となくなのだけれど
またあの家に会いに行きたかった。
東京方面から駅のホームに入る。
電車の車両のどちら側の扉が開くのか
体が記憶していた。
当時のような強い日差し
変わったところと変わらないところがある駅前の風景
少し値上がりしたバス運賃
お気に入りの並木道
バス停で足を降ろす
毎日のように行っていたコンビニでペットボトル入りの水を買う
賑やかな大通りから静かな路地へ
建て替えられた初めて見る家々
…あった。
やわらかい色の壁
けんちゃんが掃除してくれていた駐車場
私が洗濯物を干していたベランダ
あの頃けんちゃんは、どんな思いで
この建物を見つめていたのだろう。
私は今、いろんなぐちゃぐちゃな思いで
この静かな建物を見つめている。
しばらく経って
2人で歩いた道を歩きたくなった
近くのお寺への道
強い日差しを白い日傘で遮り
水を飲みながら一歩ずつ確かめるように
お豆腐屋さん
小さな駅
まな板の上を包丁がリズムよく動く音
一つずつじっくりと思い出しながら
辿り着いた。
もう、いいか。
境内を歩いていると風に撫でられ
そんな気持ちになった。
もう、自分を許してあげよう。
日陰に入り、柱に寄り掛かった。
奥さんとしてちゃんとできなかった自分を。
「私だってがんばってるもん」と言い張り
ダメな自分を認めることができなかった自分を。
よしよしと撫でてあげよう。
へたくそだったけど、がんばったじゃないか。
責められたかもしれないけれど
あれで私の最善だったのだ。
それを、私が私に認めてほしかったのだ。
当時の私に会いたくなって
来た道を戻った。
ひとつひとつの景色を、目に焼き付けがなら。
もう最後。
ここに来るのは、もう最後にしよう。
頬を
たぶん汗が流れ落ちていた。
ついさっき見たばかりの
以前住んでいた家。
開いた玄関ドアから
…実際には閉まっていたけれど
けんちゃんと私が寄り添って
ニコニコとこちらを見ているように見えた。
あの頃の二人が笑ってくれた。
私はもう、それだけでよかった。
「わかってもらえなかった」
きっとお互い思っている。
「わかってあげることができなかった」
そんな自責の念に
いつまでもいつまでもとらわれ
罪悪感と共に生きることは
もう、やめた。
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