休園保育園に何が? | 子どもたちもお年よりも笑顔あふれる街へ

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休園保育園に何が? 保育士24人中23人退職 ベテラン退職 業務過多に

東京・足立 保護者への説明 休園直前にネットで

2022年5月13日【くらし】

 ほとんどの保育士が退職し、3月末で休園になった保育園があります。東京都足立区の認可保育園、いづみ保育園です。何が起きたのか、保護者の願いは…。(染矢ゆう子)

 社会福祉法人が運営するいづみ保育園は、1958年に開設した認可保育園です。今年3月末、働いていた保育士24人中23人が退職。在園児53人が、区内の認可保育園や幼稚園に分かれて転園せざるを得なくなりました。

繰り返さないで

 「子どもは『何で転園しないといけないの』と何度も聞き、『何で』『何で』が止まりませんでした。二度と繰り返してほしくない」と転園した子どもの保護者(30代)はいいます。

 これまでも同園では2016年度に8人、17年度に9人が退職しています。

 この時期に辞めた保育士は、辞めた理由を「賃金の一方的な引き下げだった」と話します。ベテラン5人が1人ずつ園長に呼ばれ、基本給を下げ、勤続すれば毎年定額を下げていく雇用契約への同意を求められました。

園長からは“理事会を通っているから何を言っても無駄”と言われ、職員全体への説明会も拒否されました。それまでも10年間昇給はなく、予告なしのボーナスカットや住宅手当8割削減が行われてきたといいます。この保育士も「毎年賃金が減るのでは続けられない」と退職を決意しました。

 園長は賃金改定の理由を、「『初任給を上げないと誰も就職しない』とインターネット広告業者に言われたから」などと話します。民間保育園の運営費(公定価格)のうち、人件費は勤続10年目までしか上がりません。そのためベテランの賃金を下げて、初任給引き上げにあてたというのです。

 ベテランが大量退職した影響は続きました。その後入った主任保育士も、低賃金を理由に20年7月で退職。それ以降、主任は欠員のままです。

 園長は「昨年度は病休や産休が相次ぎ、国の配置基準ぎりぎりだった」と話します。足立区によると、園(弁護士)による聞き取り調査では「業務の過多」「園長との不和」「主任の不在」を複数の職員が退職理由に挙げたといいます。辞めた保育士は「もし園を再開するのなら、区はこれまでの職員の要望について、改善を約束させてほしい」と話します。

子も親も負担に

 昨年10月末、園長は“退職する保育士の代替を募集したが、採用のめどが立たなかった”と保護者に運営休止の方針を伝えました。翌々週には区が園のホールで転園相談会を始めました。

 「もう一度、慣らし保育が必要になるなど、転園は子どもにも親にも負担がかかります。転園させないためにできることを区は考えてほしかった」と先の保護者は話します。

 園長から、大量退職の原因や改善策についての言及はなし。保護者は説明会の開催を求めましたが、休園前日の3月31日にオンラインで説明があっただけでした。

 別の保護者は、「園の体質が変わらない限り、犠牲になるのは子どもです。改善しないなら、認可取り消しもありうる強い命令を区や都には出してほしい」と話します。

背景に低い公定価格 区や都は指導強化を

 日本共産党の足立区議、ぬかが和子さんは「大量退職が起きていることを知りながら園を指導してこなかった区の責任は大きい」と話します。同区は3年間で公立保育園の定員を515人削減する予定です。「公立を存続させてこそ区の保育実施責任を強化できます」と、ぬかがさん。

 日本共産党の斉藤まりこ都議は「保育園を認可する都の責任も大きく、区と連携して検査や行政指導を強化していく必要があります」と言います。児童福祉法施行令は年1回の実地検査を都道府県や政令指定都市に義務付け、設備や運営が基準を満たしているか検査します。ところが東京都は19年度、8・2%しか行っていません。

 区も検査しますが、認可取り消しなどはできません。同園は18年度に区の検査で最多の4カ所の指摘を受けていました。指摘内容は「苦情解決のしくみを整備していない」「利用者への周知が行われていない」などでしたが、区は「改善した」としています。

国の責任も問われています。厚生労働省は実地検査の義務付けをなくす規制緩和を進める予定です。パブリックコメントに賛成はゼロ。反対が280件寄せられました。「同じことを繰り返さないために、保育の公的責任を弱体化させる規制緩和はやめるべきです。働き続けられない配置基準や処遇の改善も必要です」(斉藤さん)