
あの夏が失われてからもうどれくらい経つのだろう。
まだ涼しい空気の残る朝に縁側で過ごしたあの思い出をもう味わうことが無いと思っていた初秋の土曜日、久しぶりに懐かしい床板の冷たさに心を奪われていた。
湿気を含んだ草木の匂い。
昨夜の雨のささやかな贈り物だった。

一人遊び。

シャボン玉。

納涼祭。

ミントの効いたアイスクリームはいかが?

風に煽られて一斉に鳴る風鈴の音色は心が騒ぐね。
近くを夕立が通ったようだ。
出来ればひぐらしのシャワーを背景に一つ二つの風鈴になびいていて欲しい。
夏は意外に物思いにふけリたくなる季節なんだよ。



9月に入って見頃を迎えた朝顔の花。
少し落ち着いた静かな朝を未だ小さな虫の声と一緒に愛でていたいものだ。
あぁ、今朝散歩してたらどこかで聴こえたラジオ体操を思い出した。

もう何年も前に旅行先のホテルで貰ってきたイベントのパンフレット。
夏の思い出はなかなか捨てられない。

夏に特別な思い入れがあるのは別段この季節が好きだからではないようだ。
記憶に刻まれた夏が失われて行くことへの哀惜かも知れない。
春秋冬にもまして夏が懐かしい奴では無くなっているから余計に取り戻したくなるだけなんだね。



