■重い歴史舞台でアクションブロックバスター描く過ち! | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。


「1945年、地獄島『軍艦島』、そこに朝鮮人たちがいた」


公開前からの話題作として先月末にすぐに観に行ったのですが、なかなか感想を書く気にならなかった映画『軍艦島(군함도)』(リュ・スンワン監督)ですね。「日本統治時代に長崎市の端島炭坑で強制徴用された朝鮮人が命がけで島を脱出する姿を描いた」というのはいいのですが、フィクション色があまりにも強すぎて個人的にとても残念でした。俳優らの演技がよかった分だけ悲しいのですが、これがただの娯楽映画ならばともかく、扱っている題材が題材であるため、残念ながら失敗作ではないかという個人的評価です。


「軍艦島」の愛称で知られる長崎市端島は、明治時代の石炭掘削坑が、2015年に「明治日本の産業革命遺産」23施設の一つとして世界遺産に登録されました。後に徴用に利用された場所がそのように称えられることに対する韓国の反発も理解はできますが、それにしても監督は、その「反発」の感情に流されたのか、あらゆることを盛り込みすぎてしまいました。



●無意味な「親日派糾弾」


その盛り込み要素の一つとして個人的に私が一番観ていてつらいのが、このような、いわゆる「日帝時代」の悲劇の歴史を描く時に、なぜか最近は韓国人同士の対立ばかりが描かれるということです。流行の「親日派糾弾」ということなのかは知りませんが、日本統治下で共に国を失っている非常な状況の中で、たとえ国を裏切る人が現れたとしてもそれを責めることができる人は誰もいないはずなのに、なぜことさらそればかり描こうとするのか。


韓国のテレビで、実際にこの「軍艦島」に徴用されたハラボジが取材を受けていましたが、「思い出すのも嫌だから、どうか尋ねないでくれ」といっていました。そのような生き地獄を生きて死んだ人たちの間に対立や裏切りがあったなどということが、仮に本当にそれがあったとして、そんな所の善悪を描くことに何か意味があるのかということです。


前回の南海のドイツ村の記事でも、進んで赴いたドイツでの炭鉱労働でさえ、事故死や自殺者が多発したということを書きました。坑道の行き止まりを表す「マクチャン」という韓国語が、現代韓国語として人生の行き詰まり、「万事休す」の意味の言葉になっているのをみても、その炭鉱徴用の現実を描くだけでも充分に映画にする価値があるだろうに、それをわざわざ復讐劇のような“痛快アクションブロックバスター”にしてしまったことの罪過は大きいだろうと思います。



●俳優の演技はよかったのに


ということで、その動員数にもかかわらず、韓国におけるこの映画の評点は実に低い所にとどまって、批判の記事も数多く、それを受けてリュ・スンワン監督は国内のすべての映画関連団体から脱退してしまいましたが、日刊紙『朝鮮日報』は、「監督自らが、作品性と大衆性・歴史性・想像力の分かれ道で、どれもあきらめずに追い続けた結果、その場で足踏みしているような状態」に陥った、と評しながら以下のような感想を載せました。


「朝鮮人労働者たちが『火炎瓶』を作って日本軍に投げ付けるシーンや、チェ・チルソンに追従する朝鮮人たちがライフルを持って日本軍を狙い撃ちするシーンは、むしろ西部劇を連想させる。軍艦島に潜入した後、朝鮮人の脱出を陣頭指揮する光復軍所属OSS(米戦略情報局)要員パク・ムヨン(ソン・ジュンギ)の活躍を見ていると『スーパーヒーローがアウシュビッツ収容所に潜入してナチスの兵士たちと戦う活劇』を見ているような錯覚に陥る」


いっぽうでこの映画によい話題があったとすれば、主人公としてとてもよい演技を見せてくれたファン・ジョンミンさんが、この映画で出演作累計1億人動員の快挙を遂げたということと、ソン・ジュンギさんがソン・ヘギョさんと、この映画公開前に婚約を発表し、今年10/31にめでたく結婚されることになったということくらいでしょうか。2017年夏の最大の話題作がこのような結果になって、韓国映画ファンとして実に悲しかったですね。(´ぅ_ ;`)



【あらすじ】 1945年、日本統治時代。京城パンドホテルの楽団長ガンオク(ファン・ジョンミン)と彼のたった一人の娘ソヒ(キム・スアン)。そして、鍾路(チョンノ)一帯を牛耳ったチンピラのチルソン(ソ・ジソブ)、日本統治下であらゆる苦難に遭ってきたマルリョン(イ・ジョンヒョン)ら、各自違った背景を抱える朝鮮人たちが、「日本で稼げる」という言葉に騙されて「軍艦島」に向かう。だが、彼らが乗った船が到着した場所は、朝鮮人を強制徴用する“地獄の島”だった。何も分からないまま連れてこられた朝鮮人たちは、海底1000メートルの深さの中で、毎日、ガス爆発の危険と隣り合わせながら労働を続けなければならない。ガンオクはどうにかして監視の機嫌を取り、娘ソヒだけでも守るためにあらゆる策を尽くし、チルソンとマルリョンは各自の方法で苦痛な一日一日を耐え抜く。いっぽう、戦争が終結に向かうと、光復軍所属OSS要員ムヨン(ソン・ジュンギ)は、独立運動の主要人物であるユン・ハクチョル(イ・ギョンヨン)救出作戦の指示を受けて「軍艦島」に潜入する。日本全域にアメリカの爆撃が始まり、敗戦色が深まった日本は、朝鮮人に犯したすべての蛮行を隠すため、彼らを坑道に閉じ込めたまま爆破しようと計画し、それに感づいたムヨンは朝鮮人全員で「軍艦島」を脱出することを決心するが…。







































映画『軍艦島(군함도)』(リュ・スンワン監督)予告編。

☆。.:*:・'☆'・:*:.。.:*:・'゜☆。.:*・'゜☆
韓国情報ランキングに、現在参加中です。
ブログランキング
↑上のバナーをクリックするだけで、一票が入ります!
更新を願って下さる方は、よろしくお願いいたします。