「5番目は理由がありません!」
 
いよいよ決戦の日が近づいた。ヤン代表様が脱落したメンバーたちに会ってくれることを決定されたのだ。兄さんたちにお願いしてあたふたと衣装を準備して事務所に訪ねて行った。
 しかしこれはどういうことなのか?ヤン代表様と目が合った瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。話す事も出来なかった。極度の緊張感に身体のすべての機能が停止したようだった。
 「イ・スンヒョン、しっかりして。その間の努力をまた水の泡にするつもりか?」
 どうにかこうにか精神を揺り動かして代表様の前に立った。そして歌を歌う前に、準備した秘蔵のカードを切り出した。<リアルドキュメンタリー ビッグバン>でも紹介されたとおり、‘私がチームに必ず入らなければならない5種類の理由’を先に発表したのだ。最近も時々当時の話をするが、兄さんたちは「笑い死にするかと思った。」と冗談のように話す。そのとおりだ。私も認める。今思えば手足がすくむほどくすぐったいコメントだった。だけど当時は‘必ず選ばれなければならない’という切実さで恥ずかしいという事もわからなかった。
 それは切実さがもたらした勇気だった。もしかしたら一生にまたとないチャンス、このチャンスを絶対に逃したくないという切迫さに、目が合うだけでも心臓が落ち込むほど手ごわい代表様の前でひるまず話を続けた。声が震えるんじゃないかと喉にすべての力を集中して、また瞳が揺れるんじゃないかと目をむいてみたり、1字1字に私の本気を込めて。
 
 「私が選ばれなければならない最初の理由は、末っ子というイメージは誰が何と言ってもわたしが最もふさわしいではないかという事です。2番目は踊りです。パフォーマンスや振り付けの面では私はたくさんやってきたので、あとでこのチームのパフォーマンスや振り付けに私が助けになると思います。3番目はコンセプトです。兄さんたちが強くてかっこいい男性的な姿でファンたちを確保するなら、私は可愛くて穏やかで気がきく姿でファンたちを確保できると確信します。4番目は自信です。どこに行っても堂々とした自身で本当に良い姿を見せて差し上げることが出来ると自信を持って申し上げることが出来ます。」
 そして最後に5番目の理由を言わなければならない番だった。私はすでに真っ白になった頭の中で準備したコメントを取りだしながら、最後まで強い印象を残すためにコツコツと話を続けた。
 
 「5番目は理由がありません。私にチャンスを与えてくれるなら選んだことを後悔しないくらい本当に一生懸命やるでしょう。私に隠れた気と自信で人々をみんな驚かせることでしょう。」
 本当にそうだった。これ以上何か理由を付けることが出来るでしょうか?
 私が100種類の理由を作り出して話したとしても、代表様が見るのだから必要なメンバー出なければ効果がないことだ。もしかしたら‘末っ子スンヒョンがこのチームに必要な5種類の理由’自体が無駄だったのかもしれない。それでも何でもしなければならなかった。最後のチャンスを掴む為なら、無駄な事でも恥ずかしい事でも関係なかった。歌手に対する熱望、合格に対する切実さだけ伝えることが出来ればということだ。‘狂ったように選ばれたい’と。
 そうして準備した話を終えて、歌を歌い始めた。周りの人たちの表情をうかがう暇もなかった。再び与えられることのないチャンスなので歌にすべての力を注いだ。3年とも同じだった3分が過ぎて歌が終わって、いつの間にか服は汗でびしょびしょに濡れていた。最善を尽くしたので後悔はなかった。
 
 そして1週間後、私は奇跡のようにビッグバンのメンバーになった。合格の喜びよりも大きかったのは達成感だった。努力が無駄にならなかったという事実、か細い希望を掴んで手に入れた選択を間違えていなかったという事実の確認を受けた訳だということだ。
 世界は挑戦する者のことだといったが。挑戦しなければ失敗しないかもしれないが、決して成功の道へも近づくことは出来ない。もし私がオーディションに落ちた時、そのまま諦めて内に帰っていたなら?考えたくもないことだ。もちろん、そうだったはずも絶対にないだろうけどね。
 
 
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