足がつくすべての場所が練習室に
 
当時インターネットでサンカー選手のパク・チソン兄さんの足の写真を偶然見るようになった。一目でそれまでの苦労が全部手に取るようにわかる足だった。傷と硬い皮膚、奇妙に歪んだ足の指・・・。おのずと頭が下がる写真だった。オーディションから落ちて再挑戦の準備をしているときに、ふとその足が思い出された。おかげで、‘今経験している苦難くらいはスズメの涙’と自分を慰めることが出来た。私の足はまだ無傷だったから。
 
それでも大変だった。一生懸命やるという意志だけは天を突いたが、周りの状況が支えてくれなかった。さしあたって宿舎からして問題だった。オーディション脱落と同時に、兄さんたちと合宿していたアパートから荷物を引き取らなければならなかったのだ。知り合いもいなくて、旅館のようなところに入ろうと思うと費用も侮れないだけでなく、そんなところで受け入れてくれもしない私だった。両親に申し上げれば当たり前のようにお金を送って下さるだろうが、負担をかけたくはなかった。結局恥ずかしいことだが、当時のキャスティング・マネージャーの方に身を委ねた。
「絶対に迷惑はかけません。ただ静かに寝るつもりだから。あのしばらくその家で過ごさせてもらっては駄目でしょうか?」
 
幸いマネージャーの方は快く承諾してくれて、そのように一つの峠を越した。だが安堵感もしばしの間で、滞在場所が見つかるとすぐに最も大きな心配が頭を締め付けた。オーディションに脱落した以上、これ以上レッスンを受けることが出来ないという事だった。
私を助ける人はひとえに私自身だけだった。目の前が真っ暗になったが、座り込むことは出来なかった。悩んで挫折しているその瞬間にも、時間は速いほど流れて行った。短期間に成長して違った結果を出さなければならなかったその時は、悩みさえ贅沢だった。‘行動’が必要な時期に‘悩み’で過ごす時間は‘あきらめる時間’と同じことだという思いが浮かんだ。1分1秒も無駄に出来なかった。
 
どうにかなるんじゃないかという根拠のない希望を抱いて、あてもなく歌の練習を始めた。選択した曲はタシャニの<一日一日>、ムン・ミヨンジン先輩が歌った男性バージョンを聞いた瞬間、「この歌だ」と思った。実際これ以上悩んでいる暇もなかった。うまく歌うことが出来る歌を探そうとすれば時間を消費するだけなので、一つの歌に決めて死ぬほど入り込む方がましだという判断だった。
 
嘘ではなく同じ歌を数百回以上も聞いた。目を開いた瞬間から、閉じる瞬間までその歌だけを聞いてその歌だけを歌った。兄さんたちが練習を終えた明け方には練習室で、昼間は家で、マネージャーの方が退社して帰ってきた夕方には路上で。横断歩道、店の前・・・、足がつく場所どこででも歌を歌った。おかしな目で見る人もいたし、遠慮なく「うるさい。」と面と向かって非難する人もいた。それでも不思議なほど恥ずかしくなかった。むしろそんないじめを受ける度にさらに力が湧いた。負けん気を発揮したようだ。
「今は私を狂った人のように眺めているけど、いつかの日か感嘆に満ちた目で見る日が来るだろう。」まるで呪文を暗記するように心の中で繰り返してはまた繰り返した。それは私自身との約束でもあった。
持ち歩いていた楽譜は穴が開くほどぼろぼろだった。各部分ごと思いつき次第メモしたからだ。「ここでは弱く、この発音は強く、ここでは少しゆっくり、この部分は感情をこめて。」歌を聞きながら思った感じをすべて書き記して、その通りに歌おうと努力した。
 
足りない実力がいきなり日進月歩することは出来ないだろうけど、努力と成長の跡だけははっきりと見せなければならなかった。隠れた可能性を見せてこそ、与えられたチャンスを掴むことが出来るのだから、これ以上書く場所もないほどびっしりの楽譜にもう一度ペンを走らせた。そうして一週間の時間が瞬く間に過ぎ去った。
 
 
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実際にスンリが歌っている音源です
ビギニングを見た方は知ってますよね♪
ビギニングでなくてミアネ~♪
スンリの写真はなるべく可愛い頃の(sorry!)を使用しましたww