一○年前どころか五年前のファツション雑誌に載っている流行ファツションに思わず失笑してしまうほど流行の回転の速い日本の場合とは、かなり異なる。シックの前歴ーェレガンス
フランスで「シック」という言葉が最初に辞書に登場するのは一七九三年で、第ニ帝政期（一八五ニち七○年）を通じて普及した。「エレガント」「ファツショナプル」というだけではなく、そこに何らかのニュアンスが付け加えられた状態を「シック」と呼んだが、それは「作り込む」のとは反対の「さりげなさ」というようなものだったようだ。豪華さや豊かな装飾性がデザインを意味した革命前の封建社会の価値観とは異なる、新しいテイストを示すものだった。以降、「シック」は時代によって微妙にその意味を変えていくことになる。パリのファツションを象徴する「シック」の歴史をたどる前に、その前史として「シック」以前に存在していた言葉を見ておきたい。