以下は、ご遺族が地元の新聞に掲載してくださったメッセージです。
「絆画」でかなった夢
今月は、息子・尚矢の二千歳の誕生日だった。10歳で白血病を発病し、懸命に治療に専念したものの、13歳の誕生日を迎えることができずに旅立った。毎年、主役のいない誕生日を家族、親族、バスケットボールの仲間たちとお祝いしてきた。成長していく同級生の姿に息子を重ねては、さまざまな思いを巡らせてきた。
やはり「二十歳」は特別なものを感じる。生きていたなら、どんな大人になっていたのだろう。想像の中で切ない思いがあふれてくる。
そんな中、絆画作家・大村順さんの存在を知った。絆画とは、亡くなった人が生きていたら、なっていたはずの「現在の姿」を想像して描く絵。一緒に生きていれば、きっと迎えるはずだった未来や果たしたかった夢をかなえてくれる。
私は、スーツ姿の息子と家族写真を撮ったような絵を描いてほしいと依頼した。多忙な日々でありながら、打ち合わせに自宅まで来ていただき、久しぶりに息子のことをたくさん話した。大村さんは全国どこでも必ずご遺族に会いに行き、話を聞き、依頼者の思いを描いていく。
会話の中から背景やスーツのデザイン、好みの色など一つひとつ、私たちの希望を入れ、丁寧に決めていった。顔は、生前の写真を基に、親の若い頃の写真を参考に描くということだった。打ち合わせを終えてからは、絆画が完成する日を待ち望んだ。
そして、尚矢の誕生日を前に届けてくださった絆画。父親の身長を越え、たくましい青年となった二十歳の尚矢が、笑顔でバスケットボールを手に、私たちの元に帰ってきてくれた。切なさや悲しみをはるかに超える感動で涙があふれた。尚矢の腕に手を回し、笑顔で隣に立つ私。生きていれば、あるはずの光景を、夢を、絆画でかなえてもらった。再び、個人の命をともす素晴らしい活動をされている大村さんとの出会いに、心から感謝したい。
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