受験から20年経っても体が覚えているほどの知的興奮。東大入試の日本史の問題は抜群に面白かったです。

図書館で借りてこの本を読みました。



著者は、愛媛県立今治東中等教育学校(公立の中高一貫校)に勤める現役の日本史高校教師です。


「土曜市民講座 東大入試で学ぶ日本史」の講義で取り上げられた問題の一部が掲載されているようです。


『教科書一冊で解ける東大日本史』

野澤道生

2017年1月初版
光文社新書
740円+税




0時間目
小学校の教科書で解くNHKドラマの主人公・吉備真備と遣唐使
(1997年第一問)

1時間目
神様が仏様はじめました
仏教はいかにして日本に受け入れられたのか
(2015年第一問)

2時間目
次男房前(ふささき)、参議となる
官僚政治家藤原氏の躍進、ここに始まる
(2006年第一問)

3時間目
遠くの身内より近くの他人
どう違うの?守護・守護大名・戦国大名
(1996年第二問)

4時間目
建武の新政
後醍醐天皇の恩賞は本当に不平等だったのか
(1991年第二問)

5時間目
江戸時代初期の朝廷と幕府
家康、天皇のお陰で神となる
(1993年第三問)

6時間目
家康公はそんなつもりではなかったぞ
江戸時代、大船建造はなぜ禁止されたのか
(2016年第三問)

7時間目
長州征討と諸藩への影響
何、幕府が長州を攻める!?
よし、長州に味方しよう
(2014年第三問)


8時間目
石橋湛山の「一切を棄つるの覚悟」
協調外交はなぜ失われていったのか
(2007年第四問)


著者は、東大日本史の特徴を以下の3つにまとめています。

1 教科書に書かれていないものはでません。
2 示される資料に過不足はありません。
3 「歴史の本質をとらえなさい」というメッセージが込められています。

まさにこの通り。

また、本文中には、著者が授業で使った「東大チャート」が掲載されています。

与えられた資料・教科書から抜き出した言葉の穴埋めによって、解答をまとめていくプロセスを示したものです。加えて、決めゼリフを考えて埋めることとされています。

教科書ではこう記述されているという事実を示すために山川出版社の教科書『詳説日本史B』からの引用もふんだんに盛り込まれています。

大手予備校による模範解答がこうも異なるという比較分析も興味深かったです。

東大を目指す高校生も読んでおくと良さそう。

東大日本史の対策として、私が高校時代に意識していたのは、汎用性の高いパンチラインのストックを豊富にしておくこと。

たとえば、

◯◯支配の地歩を固めた
◯◯に先鞭をつけた
◯◯に起因する
◯◯で対立が先鋭化した
◯◯の権勢を背景として◯◯した

みたいな。

あとは、ほんとに教科書の熟読と、与えられた資料から読みとれる示唆や事実をもれなく使って、それを既知の基本知識と結びつけて、たくみにパンチラインを駆使すること。

なかなか模範解答と一致することなんてないのですが、よい表現を真似して盗んでいくのがすごく楽しかったのを覚えています。

そんな知的営みを楽しめる歴史好きな親御さんはぜひ読んでみてください。