信念がある映画はいいよねえ(*´∀`*)

原作ファンの期待通りの、見事な映画化。

映画全体としては原作に忠実に繊細に、もれこぼすことなく丁寧な映像化がされている。あらためて原作を読んでみると、原作者・藤本タツキ作品の映画的センスに舌を巻く。でもだからといって、原作のまんまトレースしたら映像ってのはうまくいくわけでもなく、カメラワークとテンポに見事なセンスが光る作品だ。

さらにはクラスメートが「京本と比べると藤野の画って普通だな」といったときの、藤野が自分が特別な人間ではないんじゃないか、と思うことをあらわす無限に続く机に座る一人になってしまったときのショックを現すカットなど、映画版ならではの工夫もみられる。

原作では自分が大好きな、京本にファンだといってもらった藤野が、ウッキウッキで雨の中を歩くシーン。これマンガの一コマで現す一撃にかなわんだろうなあと思ってたけど、映画版でも大好きなシーンとなった。

原作通りの映像化。映像版は工夫を加えながらも、その原作の魅力を引き出すことのアシストに、徹した作品だ。

この作品はこれでいい、と言いたいわけであって「すべての原作つき映画は、原作通りやるべき。改変は悪」なんていうつもりはない。結局はそこに信念があるかどうかなのだ。

原作つき映画を批判したくなるのは、中途半端なコスプレショーに、とりあえずの名シーン再現など、制作側も何やってるかわからんでしょ?というときに文句が出る。全部の人を納得させることができるわけでもない。だけど改変するなり、原作通りでも「これはこれでいい。今回はこれでいく」という信念がないといけない。

映画の作り手が原作の力を信じ、この方向性でいこうという信念が実った作品である。精神論といってもらって結構。映画はこれでいく!という気持ちが宿ってるもんが、一番おもしろいんだ。