HER2はHER(human epidermal growth factor receptor、上皮成長因子受容体)familyに属するタンパク質で別名がん遺伝子と呼ばれています。  

 

    もちろんHER2は正常細胞にも存在していて増殖、分化等の細胞機能調節に関与しています、しかし遺伝子に増幅や変異が起こるとがん遺伝子として働き始め、胃がん。乳がん。卵巣がん等多くのがんでHER2遺伝子の増幅が見られます。

 

 

    抗体医薬が出現するまでは、HER2陽性の乳癌は非常に予後の悪い癌でした。

 

 

    本日紹介します、ペルツズマブ(パージェタ)はHER2と特異的に結合してがん細胞の増殖を刺激する信号を抑制します、更に免疫細胞を活発化させて殺細胞効果を発揮します(抗体依存性細胞傷害 ADCC)。

 

 

    すでに紹介しましたトラスツズマブ(ハーセプチン)市販されている抗体医薬 (その8) キメラ抗体からヒト抗体へ トラスツズマブも同様にHER2タンパクに作用する薬でしたが、ペルツズマブとトラスツズマブはHER2受容体との結合部位が異なるっているため、併用療法が行われています。ペルツズマブ/トラスツズマブ/ドセタキセル療法の手引き (国立がん研究センター中央病院)。

 

  

   乳がんによる死亡者数は、欧米では減少傾向にありますが、従来低い罹患率だった日本では増加傾向にあり、女性のがんの罹患率で胃がんを抜き1位になってしまいました。   欧米では乳がん検診への熱心な取り組みの成果とされており、一方日本では検診への意識の低さがたびたび指摘されています。 総論1:日本人女性の乳癌罹患率、乳癌死亡率の推移 (日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン)

 

   

  最後にHER2陽性の乳癌に対し、ペルツズマブ/トラスツズマブ/ドセタキセル併用療法は生存期間の延長や副作用の少なさから第1選択治療となっています。