時には岬に立とう

洗い晒しのシャツの胸を開(はだ)け
お気に入りの草臥れたジーンズで
波の音や風の音や潮の匂いに
包まれてみよう
君がいれば良いに決まっているけれど
何処かで待っていてくれても良い


金波銀波の水平線の彼方に
顔を上げて両腕を広げてみる
潮風と陽光の戯れに肌を曝して
凪の海に五感を委ねてみる
どこから来てもこれから何処へ帰っても
岬の上に立った私の足跡を
波も風も雨も土も忘れることはない




海よ
地上の雑多な町中でなければ
生きていけない
そんな馬鹿げた奴も
時には思い出して辿り着く
岬のセンチメンタリズムを
一吹きで蹴散らしてくれれば良い


花や鳥や雲や星でさえ満たせない
胸の辺りの虚ろを
おまえの冷たい青に染めて
嘲笑ってくれても良い




小さな奴なんだ
とても小さな奴なんだ
ちっぽけな奴なんだと
そうやって抱きしめてくれなくても
ただ岬に押し寄せる海風となって
私に吹きつけてくれれば良い





✳伊勢正三さんは日本のフォークシーンに
 青春のメロディーを刻み込んだ
 素晴らしいシンガーソングライター
 だと思います。

✳私の拙い詩なんか置いといて
 こんな曲ってこの人ならでしょう。