福寿草の黄色を肚に写した

松の天辺の春告げ鳥は

ギーユギーユギーユ
ピリピリピリリピリリリ
コロコロコロと鳴いて
薄い筋雲の浮かぶ青みの増した
空のスリットを残雪の山の彼方へと
軽やかに昇ってゆくよ


湿った雪の寝床を抜け出して
乾き始めた道を徘徊する人がいたら
あれは春を探しに行ったのだよと
緩んだ踏み固まった雪解け道を
弥次郎兵衛のように歩いているのだよと
思っておくれ


沢にも山にも今年も来るはずの
豊かに水の流れる朝を待ちきれず
いつの年も変わらずに過ごして来た
柔らかな命を育む乳母の着包みに
裸足で抱かれに行くのだよと
思っておくれ



暗澹とした彼の目には物語が始まり
睫毛には羽衣のような淡い光を
纏っているのだよと
どうか心優しく
思っておくれ