こんにちは、たかし弁護士(和泉貴士)です。

遺族が、病院(自死の場合は精神科が大半です。)にカルテの開示を請求したけれど、拒否されてしまったという話をときどき聞きます。

カルテは、月1~2回程度とはいえ、家族の状態をリアルタイムに記載しているので、時として情報の宝庫です。私達は労災申請を検討するための基礎資料として、カルテはほぼ100%取り寄せて参考にします。

もっとも、病院からすると、カルテはもともと開示を目的として作成されたものではないし、記載次第では遺族とトラブルになるリスクもあると考えて、なかなか開示に応じてくれないこともあります。

遺族に対する診療記録の開示に関しては、厚労省「診療情報の提供等に関する指針」(以下、「指針」と略して表記します。)に記載があります。結論から言えば、原則として医療従事者等は遺族からの診療記録の開示に応じなければなりません。理由は以下のとおりです。

指針では、「9 遺族に対する診療情報の提供」において、「医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因等についての診療情報を提供しなければならない。」と述べたうえで、「遺族に対する診療情報の提供に当たっては、3、7の(1)、(3)及び(4)並びに8の定めを準用する。」と規定されています。

そして、準用された部分の規定をみていくと、「7 診療記録の開示」においては、「医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない。」と規定されています。

例外として開示を拒否できる場合については、「8 診療情報の提供を拒み得る場合」に記載があります。具体的には、「(1)診療情報の提供が、第三者の利益を害するおそれがあるとき、(2)診療情報の提供が、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき」が挙げられています。

(2)については患者が死亡している場合にはあまり該当することは無いでしょう。(1)の具体例としては、「患者の状況等について、家族や患者の関係者が医療従事者に情報提供を行っている場合に、これらの者の同意を得ずに患者自身に当該情報を提供することにより、患者と家族や患者の関係者との人間関係が悪化するなど、これらの者の利益を害するおそれがある場合」が挙げられていますが、労災申請準備のためという目的からすれば、(1)に該当するケースはあまり想定できないように思います。

以上からすれば、労災申請等の目的でカルテ開示を請求した場合、医療従事者等は、原則として、遺族からの診療記録の開示に応じなければならないことになります。

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