少し泣き止んだりえちゃんに

 

「今日は電車大丈夫だったの?」

 

と聞くとコクンと頷くから

 

「仕事になると電車が乗れないの?

何か原因があるのかな?」

 

「・・・なんだろう」

 

と子ばらの顔を見て言うと子ばらが

 

「満員電車じゃないと大丈夫だよね

休みの日は二人で電車で出かけるし」

 

「でも人混みも苦手なんだよね?」

 

「人混みも苦手・・・」

 

「不安になると夜も眠れなくなるの?

何か精神的に不安になるのかな?」

 

「・・・わからない」

 

またぐずぐず泣き始めるりえちゃんに

困ったなと思って

 

子ばらをチラっと見ると

私の顔を見てうんうん頷くだけで

何か言う感じもないから

 

「もしかしたら何かあるかも

しれないし生活に支障がでてるなら

一度病院に行ってみたらどうかな?」

 

「・・・うん」

 

「たぶんりえちゃんも生きづらいと思うんだよね」

 

「・・・うっ・・」

 

はぁ・・・

 

「今は歩いて会社に行けるけど

もしかしてまた何かあったら

辞めたいと思うかもしれないし

そうならないためにも考えられないかな」

 

「・・・でも

今は続いてるし」

 

「そうだよね

そうなんだけど

今までそれを繰り返してて

だから4月のこともあったし

ちゃんと向き合った方がいんじゃないかなって」

 

「・・・もっと

頑張れってこと・・・」

 

そう言って子ばらの顔を見て

 

「・・・もうこれ以上頑張れない」

 

ポロポロ泣くりえちゃんに

 

「りえちゃんは頑張ってるよ

これ以上というよりはこのまま

続けて頑張ろうという話をしてるだけで

もっと頑張れって意味ではないよ」

 

「・・・うん」

 

はぁ・・・

 

「・・・あとお金のことで4月は

子供を諦めるしかなかったじゃない

2人の責任もあると思うけど子ばらは

専門職だから年齢の割には貰ってる方

だしでもりえちゃんを養えるほど

貰えてるかと言われたらまだ年齢的には

厳しいと思うから2人で働いてお金を貯めて

結婚や子供に向けて準備した方がいいと思うんだよね」

 

「・・・うん」

りえちゃんが子ばらの顔を見ると

 

「それはこの間も言ったけど二人で

働いてるからちゃんと毎月貯金を

してるし考えてるからもう心配ないよ」

 

「・・・コクン」

 

「・・・もう一つ気になって

いるのがりえちゃんの奨学金のことで

大学に行くためにご両親と決めて借りる

ことになったと思うけどそれは子ばらと

出会う前の話だし結婚前にすべて清算する

のは難しくとも返し終わる目途と言うか

そこら辺はどう考えてる?

今はちゃんと自分で返済しているの?」

 

「・・・はい、自分で返してます」

 

「少額だよね?

どれくらい返済にかかるのかな?」

 

「・・・どれくらい・・」

また子ばらの顔を見ると子ばらが

 

「日曜にお父さんと奨学金のことは

話してきてって言ったじゃん?」

 

「・・・何も言ってない」

 

「両親とどう返済するか話をして

きてって言ったんだけど・・・

そっか、してないんだ」

 

「・・・お父さんは返す気ない

払えるお金はあるけど(奨学金を)

払うと何かあったときにお金がなくて

困るからそれに使いたくないって」

 

「そうだよね

貯金なくなったら困るしね」

 

「・・・そっかだからあの時お父さんが

子ばらに『奨学金よろしくな』って言ったんだ」

 

「え?俺そんなこと言われた?」

 

「言ってたよ」

 

「全然覚えてないよ」

 

 

りえちゃんのご両親は奨学金を返せる

お金はあるけど返済には使いたくなくて

子ばらに払ってもらえばいいと思ってる

 

大学卒業して2年の我が子に数百万もの

借金を背負わせてそれを結婚相手になすりつける

 

 

「でもフォトウェディングは

ご両親がお金を出してするって

言ってたよね?」

 

「・・・それが夢だったから

私もウェディングドレス着たい・・」

と子ばらを見つめて言いながら

またポロポロ涙を流した

 

 

めちゃくちゃだ

 

泣き続けるりえちゃんを見ながら

 

こっちが泣きたい気持ちだった

 

つづく