研修生の店員さんがやっと

一つのケースを出して

 

「サイズは?」

「10です」

 

「はい」

 

そのまま指輪を手渡して

ケースをしまおうとするから

 

「15もお願いします」

 

「はい」

 

15をフクさんに手渡した

 

2.5mmのシンプルな指輪は

ミキモトで見たものよりすごく細く感じて

 

「これより太いのってありますか?」

 

「太いの?」

 

「これ2.5mmですよね

それよりも太いのってありますか?」

 

「・・・

少々お待ちください」

 

ガタガタ探しているのを

待ちながら指輪を見ると

試着用だからかもしれないけど

あっちこっちが傷だらけで

 

いつかこうなるのかな

 

眺めていると

 

店員さんが足早にバックヤードに

行ってしまい二人取り残された状況に

 

「指輪をさせたままいなくなる

とか大丈夫なのかな」

 

「これはプラチナではないのかも?」

 

指輪を外してケースの上に置くと

 

さっきの研修生ではなく

男性店員が私たちの前に来て

 

「何をお探しですか?」

 

「2.5mmは今試着させていただい

たんですがこれより太いのってありますか?」

 

「これより太いの・・・」

 

男性店員も棚をガタガタ探し始め

ケースを出すと

 

「3.5mmのこのタイプならございます」

 

「平打ちじゃなくて丸みがあるのがいいんですけど」

 

「申し訳ございません

2.5mm以上になるとこのタイプしかないです」

 

「そうですか

大丈夫です

ありがとうございました」

 

エレベーターを待っているときに

座って接客されているカップルの

目の前にリボンがかかった箱があったのを見て

 

「ここで買う人がいるんだ」

ボソリとフクさんが言うから

 

「聞こえるよ

友達のみさちゃんもここで

結婚指輪買ったんだけど

ゴールドが良かったみたいで」

 

「ゴールド?」

 

「うん、ここは貴金属店だから

ゴールドが強いみたい」

 

「そうゆうことか」

 

「上の階は買い取りとかあるみたいだし」

 

1階のショーケースを見ると

金の小判とかがあって

 

「ちょっと見たい」

とフクさんは興味深々で覗き込んで

 

「値札がないのは時価だからだよね」

 

「いくらするんだろう」

 

二人でキョロキョロしながらお店を出た

 

「ミキモトと0.3mmの違いなのに

すごく細く見えたよね」

 

「作り方なのかな?」

 

「傷だらけだったのも気になったし」

 

「俺は職場環境が悪そうな感じが気になったよ」

 

「そっち?w」

 

「いろいろありそう」

 

「女の職場って感じだったしね」

 

笑いながら話して銀座の街を少し歩きながら

 

「もう1店舗スタージュエリー行っていい?」

 

「うん、いいよ」

 

「時間もあるし友達が良かったって言ってたから」

 

「そうなんだ」

 

事前に調べて来たところも

一長一短があったし

 

見てみないと分からない

ことがあると分かったから

 

「ジュエリーショップ巡り面白いね」

 

「うん、普段関わることがないから

いろんな発見があるよね」

 

フクさんの結婚する決意を

確認するための指輪探しだったけど

 

久しぶりの普通のデートが単純に楽しかった

 

つづく