ティファニーの店内に入ると

受付はなく1階からショーケースが

たくさん並んでいてお客さんもたくさんいた

 

「今までと違って雑貨屋さんみたいだね」

 

「ハイブランドな感じはないよね」

 

ブライダルジュエリーがある

2階にエスカレーターで上がり

 

見たかった指輪を見つけ

 

「これだね

試着できるのかな」

 

「店員に聞いてみようか

すみません、試着したいんですけど」

 

「順番にご案内させていただき

ますので番号札を持ってお待ちください」

 

ラミネートされた小さな番号札を渡された

 

「なんかルミネで試着するときみたいだね」

 

「そうだね」

 

少し待っているとさっき番号札を

渡してくれたスタッフが

20代後半の女性を連れてきて

 

「ご案内させていただきます」

の言葉に被せるように

 

「どのリングですか?」

 

気だるい感じで聞かれ

 

「2.5mmと3mmのこのリングがみたいです」

 

「サイズは?」

 

「私が10で」

「15です」

 

「お待ちください」

 

 

「無表情で気だるい感じの人だね」

 

「ティファニーは派遣も多いんだよ」

 

「そうなんだ、ここ本店なのに」

 

 

「お待たせしました

2.5mmのとりあえず11と15と

3mmの13です」

 

「・・・」

 

無言のまま2.5mmを試着すると

力を入れたらすぐ曲がってしまいそうな

薄い指輪でサイズも合ってないし

イメージもつかないからすぐ外して

3mmの13を着けても同じだろうと試着せずに

 

「ありがとうございました

少し考えます」

 

「かしこまりました」

 

足早にティファニーを出た

 

 

「指輪も接客も薄っぺらかったね」

 

「ネームバリューがあるから

特に何もしなくていいのかもね」

 

「それにしてもひどくない?

一応何十万もの買い物をしようと

考えているお客様に対して」

 

「もし購入となっても立ったまま

簡単に終わりそうな気がする」

 

「ティファニーが大本命だったのに

見てみないと分からないもんだね

陽子に弟子入りさせたいよ」

 

「接客って大事だよね」

 

「商品が気に入るかもあるけど

この人から買いたいって思わない

と絶対ないもんね

 

ここがギンザタナカだよ

今までのお店と雰囲気全然違うね」

 

「ジュエリーショップの感じはないね」

 

「入ってみよう」

 

入ってすぐにいた店員さんに

 

「結婚指輪を見に来たんですが」

 

と話しかけると

 

「地下1階になります」

 

「ありがとうございます」

 

4店舗とも店内もエレベーターも

オシャレな感じだったけど

ギンザタナカはTHE雑居ビルのエレベーター

 

地下1階に着くと暗い店内に

ショーケースが並んでいて

スタッフも話しかけてくる気配もなく

 

二人で一通り指輪を見たら

 

「これを試着したいんですけど」

「試着ですか?」

「はい」

「えーとこれは・・・」

 

ガタガタ内側の棚を開けて

探している店員を見ながら

 

 

「研修生って書いてあった」

 

フクさんが私にボソリと言った

 

つづく