カルティエ銀座並木通りブティック

に着きドアの前に立つとドアボーイが

静かに扉を開けてくれた

 

受付にいた男性スタッフが

 

「今日は何かお探しですか?」

 

と声を掛けて来たから

 

「結婚指輪を見に来たんですが」

 

「申し訳ございません

本日は予約でご案内ができない状況になっております」

 

「え?見せてもらえなんですか?」

 

「見ていただくことは可能なのですが

対応できるスタッフがおりませんので

本日ご試着いただく等の対応が難しくなっております」

 

「予約しないとダメなんですね」

 

「その日によって異なりまして

本日は朝からお並びのお客様が多数おり

予約が埋まってしまった状況です

大変申し訳ございません」

 

「銀座にもう2店舗ありますよね?

そっちも同じですか?」

 

「本日は銀座のどの店舗も

予約が埋まっている状況です

誠に申し訳ございません」

 

「そうなんですね・・・

指輪だけ見ていいですか?」

 

「それは是非ご覧ください

ブライダルリングは3階になります

エレベーターまでご案内致します」

 

エレベーターに乗って3階のブライダル

フロアーで降り接客を受けているのは

奥の椅子に座っている2組のみ

静かな店内で指輪を見て

 

「フクさん、これ、これが見たかったの」

 

「普通だね」

 

「普通だよね

してみないと分からないね

ちょっと出してくれないのかな

一瞬で終わるのに」

 

「・・・仕方ないよね」

 

「・・・次、行こっか」

 

またエレベーターに乗り1階に戻ると

さっきの男性スタッフが

 

「またお待ちしております」

と深く頭を下げてくれ

ドアボーイが扉を開けてくれた

 

お店を出ると

 

「俺たちだから相手にしてくれなかったのかな」

 

「え?」

 

「こんな格好だから」

 

フクさんは白のTシャツに黒のチノパン

 

私はピンクのサマーアンサンブルで

オフショルにミニスカパン

 

「1階に暇そうなスタッフもいたけど

全く相手にもされなかったし」

 

「だからちゃんとした格好に

しようって私言ったのに」

 

「まぁ関係ないと思うけど」

 

「・・・そうかな

ここ、タサキだよ」

 

「タサキは大丈夫だよ」

 

店内に入ると受付があり

 

「結婚指輪を見に来たんですが」

 

「ブライダルジュエリーは2階に

なります、エスカレーターでお上がりください」

 

「ありがとうございます」

 

エスカレーターで2階に上がり

また受付があって男性スタッフが

寄って来て頭を下げながら

 

「ご来店いただき誠に

ありがとうございます

大変申し訳ございませんが本日

予約が埋まっている状況でして

対応ができなくなっております」

 

「・・・そうなんですね」

 

「誠に申し訳ございません」

 

「指輪は見てもいいですか?」

 

「はい、この2ケースにマリッジリング

の全ての商品がございますので

是非ご覧になってください」

 

「・・・はい」

 

店内は多くのショーケースがあるのに

ここの2ケースだけ見ろってこと?

 

二人で顔を見合わせた後

ショーケースを覗き込んで

 

「やっぱりこれだと分からないね」

「そうだね」

 

「ありがとうございました」

男性スタッフに言うと

 

「本日は申し訳ございませんでした

是非こちらをお持ちください」

 

と紙袋を渡され

 

「またのご来店を心よりお待ちしております」

 

「ありがとうございます」

 

 

お店をでて紙袋の中を見ると

 

「すごく立派なパンフレットだね」

 

「これにいくらお金掛けてるんだろう」

 

「これくれたってことは

相手にはされたってことだよね?」

 

「でもどこも予約がないとダメなんだね」

 

「いろいろ調べたはずなのに

予約なしだと見せてくれないなんて

今日は何も見れずに終わっちゃうのかな」

 

「次は大丈夫だよ」

 

「・・・うん、そうだね

ここがミキモトだよ」

 

つづく