「俺は俺の考えがあるって

こだわりばかり主張されたら

結婚生活なんてできないよ」

 

「・・・野ばらだって

こだわり強いところあるだろう」

 

 

そう言ってソファから立ち上がり

私に背を向けてアイロンがけを始めた

 

昨日の話し合いで

殆ど眠れてなくて

 

モヤモヤを来週に延ばしたくないし

妄想で変な方向に行くたくないから

 

フクさんと話し合うために

来ているのにまるで私が

いないかのように自分のことを

するフクさんを目で追いながら

 

悲しくなってきて

 

「帰る」

 

荷物を持って帰ろうとしたら

 

「なんで?荷物置いて、話をしよう」

 

「フクさんはもう話すことないんでしょ?」

 

「野ばらの話したいこと話そう」

 

「いつも私からばっかりだよ

結婚の話も話し合いも

私からしなかったらフクさん

何も言わないじゃん

そんなんじゃ話なんて進まないよ」

 

「ごめん

悲しい気持ちにさせてごめんね」

 

 

いつもそう

 

私が何か不満を言えば

優しい言葉でなだめておさめて

 

それを繰り返してるだけ

 

こんな話し合いに

なんの意味があるんだろう

 

 

「もう私は話すことなんてない」

 

「じゃ指輪を買いに行こう

エンゲージリング

そしたら野ばらも安心するでしょ」

 

「・・・そうゆうことじゃない」

 

「じゃなに?野ばらは何で安心するの?」

 

「・・・昨日言われて気になった

こと聞いてもいい?」

 

「いいよ」

 

「結婚したら私の負担が軽くなる

って言ったでしょ?

だから俺の自由を増やしてほしいって

私が楽になるのが嫌ってこと?」

 

「そんな意味では言ってないよ

野ばらが結婚するメリットとして

家賃とかかからなくて負担が減る

ことを言っただけで

自由なんて言ってもないし」

 

「自由って言ったよ

今回だけじゃないよ

お金の話をしたときも

休日の過ごし方の話をしたときも

俺は自由でいたいって」

 

「自由でいたいなんて言ってない」

 

「言ったよ」

 

「証拠は?録音してる?」

 

そんなのないけど絶対言ってる!

 

言おうとして止めた

 

言った言ってないの

水掛け論をしたいわけじゃない

 

証拠は?なんて言うフクさんに

反論したところできっと認めない

 

揉めたいわけではない

 

 

でも無理して結婚してほしいわけでもない

 

 

「無理して結婚する必要はないんだよ」

 

「無理なんてしてないよ

野ばらみたいな子はいないと

思ってる

謙虚で素直でピュアで

わがままも言わなくて

ちゃんとしていて家事もできて

奇麗にしていてスタイルも維持して

こんないい子なんていないよ

だから俺は野ばらしかいないと

思っているしこんなに気があう人に

二度と出会えないと思うから

野ばらと一緒にいたいんだよ」

 

 

 

「だったら入籍の日を決めよう」

 

「入籍の日?」

 

「ちゃんとしたものが欲しい」

 

「・・・俺が50歳になる来年の3,4,5月くらいかな」

 

「くらいじゃなくてちゃんとした日にち」

 

「日にちなんて今は決められないよ

そのときで状況なんて変わるし」

 

「そんなこと言ってたら一生決まらないよ」

 

「そんなことないよ

来年の春くらいって決めて

話していけばいんだから

今決めることじゃないし

仕事のこととか考えながら決めて行きたいし」

 

「もしも今決めなかったら

私が無理って言ったら?」

 

「こんなことで別れとか考えるの?」

 

「そうじゃないけど

日にちを決めてもいいじゃん

今確かなことが欲しいの」

 

「じゃ俺の誕生日?」

 

「フクさんのお誕生日と記念日一緒に祝うの?」

 

「・・・誕生日の翌日とか?」

 

「3月20日春分の日は?

祝日ならフクさんもお休み

取れて一緒にいられるかもしれないし」

 

「分かった

春分の日を目途に話していこう」

 

「目途じゃない

その日にする話しをするの」

 

「・・・その時によって変わる

こともあるかもしれないし」

 

「なんで変わるの?

そこに向けて話していくんだよ?

なんでそうやって結婚しない保険をかけるの?」

 

「そんなつもりはないよ」

 

「確実なことを話したい

そうやって引き延ばされたくない」

 

「前に入籍日の話をしていたなら

引き延ばされたとか言われるのも

分かるけど今回初めてこんな話に

なったのになんでそんなことを

言われなきゃいけないんだよ!

そうやって勝手に決めつけるなよ!」

 

「有給のこともずっと引き延ばされてるよ!」

 

 

去年転職をしてやっと

今年の1月に有給が付与された

 

長く勤めていた職場は有給を

取得することが難しかったけど

今の職場は有給を取ることを

推奨してくれていて

 

「1月は難しいけど2月なら有給を取れるからどこかに行こ」

 

そう言われていたけど

 

「2月は実家に帰るし難しいから

3月中旬ならどうにかなるかも

3月になったら決めよう」

 

と言われ

 

「出向者が来たり年度末もあって

3月と4月は難しいから5月でいいかな?」

 

「大丈夫だよ」

 

5月になっても有給の話は

全くなくて日曜出勤したりと

忙しそうで

 

状況が分かるからこそ

いつなら?とも言いたくなくて

 

フクさんから何かあるまで

ずっと待っていたけど

 

たぶんこのまま何もないんだろうな

 

そんな気持ちでいたから

思わず言葉にしたら

 

フクさんは卓上カレンダーを取りに行って

 

「5月はもう無理だけど

6月のこの日は?3連休にして

どこか泊りがけで遠出しよう

後この週なら水曜か木曜

単発で休み取れるから

平日しか行けないところに

どこか行ってもいいよね

野ばらは?有給取れる?」

 

「それは大丈夫」

 

「明日仕事の確認はするけど

たぶん大丈夫だから

どこに行くか野ばら考えといて

行きたいところに行こう」

 

「・・・うん」

 

「ごめん

そろそろ準備しないと」

 

「そうだよね、帰るよ」

 

「来てくれてありがとう」

 

「ううん、こちらこそ話してくれてありがとう」

 

「これからも話をちゃんとしよ」

 

「・・・うん」

 

結婚の意思も確認できて

入籍日も決まったのに

 

なんでこんなにモヤモヤするんだろう

 

寝不足だからかな

 

その日は帰って20時には眠りについた

 

つづき