黙ってフクさんの

マッサージを続けてると

 

「マッサージ疲れたでしょ、おいで」

 

横になっているフクさんに

手を広げて言われたけど

 

「お酒飲みたいからいい」

 

「ごめん

じゃ野ばらにラブソングを贈るよ」

 

「ラブソング?」

 

「俺の気持ちを」

 

フクさんは若い頃バンド活動を

していてギタリストで前座だけど

地元のZeppで演奏したこともあり

 

ギターは上手だけど

カラオケは行きたくないと

頑なに拒否するほど歌は苦手で

聞いたことがなかった

 

このままずっと機嫌悪く

過ごすのも良くないし

 

「私が感動して泣くくらいの

ラブソングを作って歌って」

 

そう言うと

 

「感動するようなラブソング・・・」

 

言い出しっぺなのに

言わなければ良かったな

 

そんな顔でギターを出して

 

「何が良いかな・・・」

「何がじゃなくて私への

ラブソングがいいの」

 

ギターを弾きながら洋楽を歌い始めて

一通り歌うと

 

「ラブソングだよ」

 

「洋楽は知らないし

英語も分からないし

何言ってるかもわからないから

日本語で私のために歌って」

 

「邦楽わからないから」

 

「誰かの歌じゃなくて

フクさんが作った歌がいいの」

 

少し考えてからフクさんがギターを弾き始めた

 

♪「I love you」

歌詞 フク

作曲 フク

 

I love you I love you

 

いつも俺のために

尽くしてくれてありがとう

 

そんな野ばらを愛しているし

いつも感謝をしているよ

 

I love you I love you

 

いつも俺のことを

一番に考えてくれてありがとう

 

これからもずっと一緒にいたい

 

こんな俺だけどずっと

一緒にいて欲しい

 

誰よりも愛してる♪

 

 

「ダメだ、フクさん

笑いすぎてお腹が痛くて死にそう!」

 

「俺の本当の気持ちだよ」

 

「分かった

すっごく伝わったよ

ありがと」

 

言ってることは愛の言葉なんだけど

 

お世辞にも上手とは言えないし

メロディーにちゃんと乗れて

ないからコメディぽくて

もっと長かったけど笑いすぎて半分以上覚えてない

 

フクさんは普段ふざけるタイプでは

ないんだけど私のむちゃぶりに

 

フクさんなりに頑張ってくれたから

 

「これがホワイトデーって

ことで大丈夫だよ、ありがと」

 

 

 

今回のホワイトデーで

結局私はフクさんに

見返りを求めているんだなって

 

たかだか1,500円ほどの揚げ物で

しかも半分は私が食べてる

お返しがない!って怒って

 

 

イヤ

 

でも見返りって

求めるよね?

 

金額じゃなくて

何を贈ったら喜んでもらえるか

選んで買いに行く時間も含めて

相手のことを考えてることが

大切な気もするから

 

 

これが結婚したら

見返りを求めない関係に

なれたりするのかな