階級会社と労働貴族 | フリーエンジニアを辞めました

階級会社と労働貴族

2006年10月から2009年3月まで、某メーカーの社内システム開発に参画した。これから話す内容を理解しやすくするために、まずは簡単に契約の構造を説明しておきたい。


件のメーカーは80社あまりでグループを構成している。そのグループ本社が発注元であった。1次請けはグループ子会社のA社。そのA社はさらに4つのソフトハウスに再委託した。再委託は全工程に渡って委任契約。つまりA社の事務所に常駐して、時間精算する契約だった。


2次請けの4社のなかの1社をB社としよう。B社はさらに別の会社に再委託した。つまり3次請けである。その3次請けのなかの1社が、これまでのブログで時々登場する「関西コンピュータ」だ。私は関西コンピュータを通して、このプロジェクトに参画した。


契約構造を多くの人が馴染み深い言葉で言い換えるとこうなる。


某メーカーが発注元。
A社は元請。
B社は下請け。
関西コンピュータは孫請け。


私はひ孫受けということになるが、関西コンピュータは「請ける」というより、営業を代行するだけなので、実質的に孫受けだったと言えるだろう。


さて、ここからが本題。


階級社会という言葉をご存知だろうか。階級社会とは生まれたときから自分が所属する階級が決まっていて、原則的に他の階級に移ることができない社会のことである。例を挙げると「士農工商」やインドのカースト制度がある。


階級会社とは私の造語だが、階級社会のように入社したときに「階級」が決まり、原則的に他の階級に移ることができない会社のことだ。


私が見た限りの話という前提であるが、前述の某メーカーも階級会社だった。グループ本社がピラミッド構造の頂点に位置している。それを支えるのが、A社のようなグループ子会社である。さらに底辺には今話題の派遣労働者たちがいる。


某メーカーの場合は、グループ本社の社員は強い労働組合に守られていた。長期休暇と安定した雇用。生産性に見合わない高い給料をもらっている人も少なくない。


一方でA社のような子会社には労働組合がない。長時間労働と有名無実化した夏季休暇と年末年始休暇。


お盆や正月に本社の社員が10日間連続で休む一方で、A社の社員は申し訳程度にしか休みを取れていなかった。おまけにほぼ毎日、深夜残業をしている。そして何より、本社の社員に比べて、A社の社員は給料が安い。A社社員の話では、本社社員のおよそ半分程度だという。


最近になって「労働貴族」という言葉を知った。失業率が上昇しているこの時期に、春闘で賃上げを要求した人たちのことを、あるメディアがそのように言っていた。


「貴族」という言葉から、下位階級の人たちから搾取する社会制度を連想した。労働貴族とは、なんともピッタリなネーミングである。