フジサンケイグループ(FCG)のAMラジオ放送会社・ニッポン放送の株式を巡る、グループの最中核企業・フジテレビジョンと堀江貴文氏率いるライブドアの骨肉の争いは、今日フジテレビがニッポン放送株の公開買い付け(TOB)により、全体の36%以上を取得したことを記者会見で公表し、事実上TOB成立。 ライブドアはフジに対するニッポン放送新株予約権の差し止めの仮処分に関する司法の判断でしか逆転する可能性がなくなり、いよいよ窮地に追い詰められる格好になったが、僕の中では全くの予測通りで何ら驚きはない。 しかし、この問題を巡っての同じFCGの主力新聞である『産經新聞』〔産業経済新聞・サンケイ〕の論調を、僕は懐疑的な目で見ている。 産經は先月だったか、自社の社説にあたる『主張』、さらに有識者が執筆している『正論』などのオピニオン面などで、FCGの活字メディアとして盛んにライブドア批判を繰り広げているが、『主張』で朝日新聞社発行の週刊誌『AERA(アエラ)』の堀江氏へのインタビュー記事を引用し、その上で産經としてのスタンスを示している。 このインタビューで堀江氏は『フジサンケイグループにはオピニオン路線はいらない。エンターテイメント路線をさらに強化したい』と語っているが、産經の主張はこれに対する反論なのである。 産經は、朝日とは対極の立場で自社の考えを示すことが産經本紙の限らず、月刊オピニオン雑誌『正論』でも数多くあり、時には攻撃的な論調も見受けられる。しかし、他紙の記事を名指しで引用したうえで、産經としての主張を示すというのはいかがなものか?と僕は思う。それに、FCGのボスともいうべきフジテレビ・日枝久会長が『堀江さんとあう必要はない』と発言したのに従うかのように、堀江氏に対する直撃取材をほとんど行っていない。 産經は、かつてFCGのドンとして長年権力を握り続けてきた鹿内信隆氏など※鹿内家一族が民主主義を守ることを標榜する『正論路線』を掲げ、北朝鮮による拉致問題、旧国鉄の分割民営化など時には世間のタブーを打ち破り、思い切った主張を繰り広げてきた。 ※鹿内家は、大部分の報道でFCGの創業者一族とされているが、これは間違いで、長年FCGのドンとして君臨し続けた鹿内信隆氏は、フジテレビの初代社長の側近として仕え、初代社長が退いた後に自らの地位を徐々に高め、しまいにはFCGの議長としてグループの最高権力を握り、後に長男の春雄氏に議長職を譲った。そしてTOB最終盤に突然現われた鹿内宏明氏は婿養子で、信隆氏、春雄氏の死去後FCG議長に就任したが、あまりの横暴な振る舞いにFCG各社首脳陣から不満が噴出し、91年に産經会長職を解任され、フジ会長職・FCG議長を辞任している。 しかし今回のFCGとライブドアの対立で、思い切った主張をせずグループ幹部の意向に従って取材をほとんど差し控えるとは、僕はまったく産經らしくないとしか思えない。 僕は、ここは思い切って堀江氏に産經の幹部が直撃インタビューした上で、その後に主張や産經抄などで反論を展開するのが筋ではないかと思う。そう、産經HPの会社案内で思い切ったことを言っている吉田信行常務取締役論説委員長や、産經抄の執筆者・石井英夫特別論説委員の出番なのに、なんか勿体ないなぁ…。 僕は、かつての産經の広告キャッチコピー『群れない、逃げない。Theオンリーワン!』が好きだ。 それに、時に思い切った主張をする姿勢に好感を持っている。 でも今回のこの問題に関しては、ある意味『逃げている』ようにしか見えない。 いつも『正論』『正論』と言うのならここは逃げずにライブドアに堂々と立ち向かって、グループの活字メディアとしての筋を通せ!