『統計学がわかる』向後千春・冨永敦子 著(技術評論社) | 不動産鑑定、統計学、文系人間のための数学など

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上野山清久のブログ
 「不動産鑑定と統計学」(同名のホームページも公開中です。)、数学その他に関する日々の学習成果等について「学ぶ側の視点」で綴っていこうかと思います。

 私も数多くの入門書に手を出しましたが、統計学をゼロから始めようという人が最初に手に取る本として、 これが現時点ではベストなのではないかと思います。

 

 この本の良いところは、まず本が薄いうえに、ハンバーガーショップ内での客や店長の素朴な疑問を、アルバイトのエミちゃんが統計学で解決するという非常に親しみやすい内容のため、読み通すのにさほど苦労しないというところだと思います。

 また、図解も分かりやすく、例えば、私は今でも「標本平均の平均」という考え方は理解しにくいと感じていますが、他の入門書と比較してこの点に関するこの本の図解は分かりやすいと思います(「標本平均の平均」については、「統計学の入門書を読み返す(5)」参照)。

 また、分散分析の群間変動と群内変動に関する図解も、この本がピカイチだと思います。

 

 さらに、お手軽な割にはカイ2乗検定や分散分析までカバーしてくれていて、非常に貴重な入門書なのではないでしょうか。

 

 ただし、初学者がこの本一冊読んだからといって、すぐに例えば 「t分布」 について「なるほどよく分かった。」となるかというと、なかなかそういうわけにもいかないと思いますので、そこはその後に別の本なり資料なりで学習していく必要はあると思います。

 

 標本平均が母平均の95%信頼区間に入るということは、逆にいえば母平均が標本平均の95%信頼区間に入るということだと思いますが、私はこの辺を理解するのは難しいと感じていて、この本でもこの辺の説明はややこしいなと感じました。

 この点に関するこの本の45ページの図解は、標本平均を中心とするt分布曲線を1本書き加えればもう少し分かりやすくなると思うのですが・・・。

 ここら辺を一番分かりやすく説明してくれている本は、私の知る限りでは 『統計のはなし』 大村平 著(日科技連)でしょうか。