お彼岸に李麗仙さんの墓参り
6月に亡くなった李麗仙さんの墓参りに上久保慶子と連れだって行った。
都下の霊園は木々に囲まれ厳かに静かで癒される場所だった。
大鶴義丹脚本演出『小鳥の水浴』で毒母を上久保慶子が演じた。
生前その報告に入居ホームを訪ねた。
お茶しながらこちらに目もくれず前に座った上久保慶子をニコニコ見ていた。
前年に出演した山崎哲作演出「プロヴァンスの庭で」をしっかり見てくれたからだろうか。
倒れるまで準備進んでいた『隅田川』の船に乗り込む若い娘に上久保慶子を願った。
「アンタネ~どこの馬の骨か分からないのに入れられるわけないじゃないの!そんな甘いものじゃないわよ!」
「そりゃそうだよね~」
キャストが決まる頃「アンタサ~あの役アンタとこのあの子どう?」
「李さん早く行ってよ~断られたから仕事入れたよ~」
若い娘を老婆にして共同制作の森島朋美さんに決まった。
当然演出の山崎哲さんに相談はするだろうが裏話である。
草原に小川が流れ一角に板塀があり柔らかい日が当たっている。
時々そこに行き座り込み塀にもたれていると向う側に背中のぬくもりを共有する李さんがいる。
揺るぎないアングラの女王だが母,主婦、女、としての大鶴初子さんに大いに共感していた。
ある日板塀倒れて振り向けば忽然と消えている。
見渡す限り草原が広がっているだけなのだ。
幾星霜何を語らずとも背中合わせにいられた安らぎの喪失は半端なく戸惑い哀しい。
いずれ門火くぐりて逢える。
けれど今は此岸のここへ又来よう。
ね~李さん。合掌。
★『彼岸明け賽の河原で石積みぬ』