昨日の朝。
起きてみたら胃の調子が例外的に良く、お腹がキューッと減ったので、
「お、これなら朝からトンカツ定食いけるかも」と思い、
散歩のついでに、
24時間営業の「松のや」さんで朝のトンカツ定食を食べました。
けれども、やはり、胸焼けしてしまい御飯をかなり残して店を出ました。
胸焼けのため表の道に戻るのが億劫になり、
取り敢えずは裏の道を歩くことに。
で、しばらく南へと歩いていたら、
大阪天満宮に着いてしまいました。
「この辺にある」ということは知っていたものの松のやさんの横の道を歩くと天神さんに出るとは知らなかった。
「裏の道」だなんて思ったわけだけど参道やん。笑
天神さんに失礼をばこいちゃいました。
せっかく天神さんに行き着いたので敷地の中に入ることに、
そうしたら左手に繫昌亭。
落語の常設小屋ですね。
しばらく休んでいたのですが、この7月から再開しました。
そういえば先日のニュースでやってたな。
で、天神さんの敷地を歩いているとオシッコがしたくなり、
トイレはないかとキョロキョロしていたら、やはりありました。
だから入って用を足したところ、
目の前をふと見ると、
注意書きのプレートが貼ってある。
あはは、なるほど。
男子トイレでは大事な注意事項ですね。
ところで、「松茸の露(まつたけのつゆ)」の松茸ってなあに?笑
トイレをお借りしたので、
もちろん参拝をして、ちゃんと賽銭をあげましたよ。
参道を「裏道」とは私もホンマに罰当たりだな。
どうりで広くてゴミなど落ちていない綺麗な道だと思ったよ。
それはさておき、トイレもあることだし、
これからも時々お参りしようかな。
そんな、大阪人なのに天神さんに御参りしたことが一度もなかった罰当たりな私が書いた小説の続きをどうぞ!
小説「隕石そして」
第8話:温泉
飯盛山の山麓に到着するまでの道は、予想外に空いていた。
元旦だからとも言えるが、今年の元旦が尋常であるはずがない。
浮遊体が各地の港の沖へと出てしまった今となっては、人々が「行き先」を失ってしまっているのかもしれない。
初詣に外出する気分ではないだろうし、どこかに遊びに行く心境でもないだろう。
なにせ、陸地に残された全員に死が迫っているのだ。
それでも、困難な道中だった。
まず、乗り捨てられた自動車が多く、あちこちで迂回せざるを得なかった。
また、治安の乱れが顕在化しだしていて、暴徒に行く手を何回か阻まれた。
しかし、そのたびに、マユと大ママが凄んで見せて暴徒を追い払ってくれた。
「お前ら、しまいに、はらわたを食うてまうぞ!」とか、
「ウチを怒らせたらシロアリ程度ではすまんで!」とか、
マユと大ママが迫力満杯の表情で怒鳴り散らしてくれた。
水商売に従事する女子は、真夜中に酔い客に絡まれることが多い。
だから、「凄み慣れている」というか、相手を威嚇するのが実に巧い。
マユと大ママが暴徒を次々と蹴散らしてくれたおかげで、俺の愛車、ジムニーは飯盛山の東の外れの麓に無事に到着した。
そこからは、三人とも、大きなリュックを背負って、ケモノ道を登った。
その洞窟を訪れたのは二十五年以上も前のことなのだが、幸い俺の記憶は正確で洞窟の入り口の縦穴のところに迷わずに到着した。
俺は、用意してあったロープの一旦を縦穴の近くの立ち木に縛り付け、もう一端を縦穴に垂らせた。
そして、三人は、俺、マユ、大ママの順に下の洞窟へと下りた。
俺は、多数のLEDライトやLED懐中電灯を用意していたのだが、早速役に立ってくれた。
おかげで、洞窟内は、薄暗くても人間の目には十分な明るさになった。
その洞窟の中は、俺が憶えていたのよりも、うんと暖かかった。
マユも大ママもたいそう感心してくれた。
マユが言った。
「なんや、これ。まるで春やな。どれだけ暖かいねん。しかも、この洞窟、十分な広さやな。入口はただの小さな穴やのに、下は二十畳ほどあるみたいやな。ここ、ええやん」
そう言われて、俺は、自慢したくなった。
「なっ、ええやろ。ここなら、ゆっくりと過ごせるで。寝袋は、俺が用意したもの一つしかないけど、マユちゃんと大ママが持ってきた毛布で三人とも何とかなりそうやね、ここ暖かいもんな」
大ママは、リュックに入れて背負ってきた物資のことを気にした。
「持ってきたもので、どれくらい持つやろうね?」
三人は、持ってきたものを取り出して、目の前に広げてみた。
マユが言った。
「重かったけど、随分とあるね。水さえ調達できれば、4、5日は持ちそうやね」
水なら、俺に心当たりがある。
「水のことなら、心配ないで。たしか、入り口の縦穴から十メートルほどのところに湧水があるから。今から、ちょっと、上に行って確認してくるわ」
俺は、湧水の位置を確認しに行き、そして戻ってきた。
「ハマちゃん、どうやった、ちゃんとあったか?」
「あった。舐めてみたけど、美味しかったで。あれなら十分に飲めるわ。まあ、水は明日、汲むとして、今日のところは、持ってきたミネラルウォーターを使おうや」
やがて、夕刻になり、俺たちは腹が減ってきた。
大ママが口を開いた。
「お腹が減ってきたな。そろそろ、なにか食べようか」
俺は、持ってきたカップヌードルを取り出した。もちろん、カセットコンロも用意してある。
マユは、そのカセットコンロのサイズを見て驚いた。
「小さいな、そんなのがあるんや」
「うん。ホームセンターで見つけたんや。奥行なんか、カセットガスよりも短いやろ」
マユも大ママもカップヌードルを食べるということになったので、俺は「どれにする?」と聞いた。
すると、マユが・・・
「カレーにする」
しかし、俺は・・・
「えっ」
「『えっ』て、なんや。カレー味を食べたら、あかんのか?」
「いや、別に・・・ただ・・・カレーは一個しかないから・・・」
「ほんなら『どれにする』なんて聞かずに、ハマちゃんがカレーを取ったらよかったやん」
「いや、ええよ。カレー、食べて」
「そんな風に言われたら食べづらいやん・・・けど・・・食べるけどね、アハハ」
「なんやねん、それ」
結局、マユはカレー味を、大ママはシーフード味を、そして俺は普通のカップヌードルをそれぞれ食べた。
カップヌードルを食べ終わり、三人が一服していると、マユが・・・
「なあ、あれ、なんやろう、煙かな?」
俺は、何のことだかわからずマユに聞いた。
「煙って、それ、どこ?」
「あそこ」
俺は、マユが指をさす方向を見た。
「暗くて、よう見えんけど、なんかユラユラとしているね、なんやろ?」
「懐中電灯で照らしたらええやん」
俺は、マユに言われたとおりに、その方向を照らしてみた。そして、言った。
「あれ、煙というか、湯気とちゃうか?」
大ママも湯気だと思ったらしい。
「うん、あれは湯気やね。ハマちゃん、ちょっと近くに行って見てきてや」
俺は、大ママに言われたとおりに、湯気と思われるものが立ち上がる場所を確認しに行った。
ところが・・・
ワアッ!
すると、突然、マユと大ママの前から俺の姿が消えた。
で、消えた俺なのだが、俺は、どこかに滑り落ちたのだった。
そこで、俺は、自分のまわりを懐中電灯で照らしてみた。
上から声がした。
「ハマちゃん、大丈夫か?」
マユの声だ。
俺は、大丈夫だったが、たいそう驚いた。
「だっ・・・大丈夫やけど・・・信じられん!」
「何が?」
「下は、もっと大きな洞窟やで。しかも、大きな水たまりがある。ちょっと、水に触ってみるわ・・・ええっ!」
「こんどは、どうしたんや?」
「これ、お湯や。『なにわの湯』くらいの丁度いい湯加減や。これ、温泉やで!」
「ホンマかいな?!」
俺は、洞窟のそのまた下にあった洞窟で、なんと温泉を発見したのだった。
俺が新入社員研修の後に研修仲間と発見した洞窟。その洞窟の下は、更に大きな洞窟になっていた。しかも、その大きな洞窟には温泉が湧いていた。
俺は、その温泉洞窟に偶然落下したわけだが、後でよく見ると、その大きな洞窟へと通じる穴は、その傾斜が緩やかだった。不意を突かれた俺が傾斜の急な縦穴のように感じただけのことだった。だから、マユも大ママも下の大きな洞窟へと通じるその穴を無理なく下りてこられた。
そして、今、俺、マユ、そして大ママの三人は下の洞窟にいる。目の前には、有馬グランドホテルの大浴場の浴槽よりも大きな地下温泉がある。
やはりと言うか、マユが言い出した。
「入ろうか」
俺は二人の女性に遠慮して言った。
「俺、上の洞窟に上がろうか?」
マユは俺が思っていた通りのことを言った。
「この三人しかおらへんやん、別にええよ」
マユはそう言うと、衣服をパッパと脱いでしまった。
マユに続き、大ママもさっさと脱いだ。
そして、俺はマユに言われた。
「ハマちゃんも脱げや」
俺は躊躇した。
「いやや」
「なんでや」
「だって、俺、身体がブヨブヨやもん」
「かまへん。ハマちゃんにナイスボディーなんか期待してへん。脱いでまえや」
運動不足で身体が贅肉だらけの俺は本当に嫌だったのだが、二人に全裸になられてしまったので止むを得ず脱いだ。
大ママは六十一歳なので、裸になってほしくはなかったのだが、いざ脱がれてみると、鑑賞に耐えられる身体だった。マユの方は三十歳だけに身体のラインに崩れなど一切なく、ナイスボディーなので、俺の息子が起立しそうになった。それでも、息子は何とか寝ていてくれた。
それを見たマユに俺は言われてしまった。
「なんや、ハマちゃんのオチンチン、ウチの裸を見たのに立ってへんやん、失礼やな」
そう言われた俺の息子は思い出したように立ってしまった。立ったら立ったで、俺はまたもや言われてしまった。
「なんや、ハマちゃんは欲情しているのか、えらい歳やのに、やっぱりスケベやな、ハハハ」
マユには、いつも、しっかりとやり込められてしまう。
「さあ、入るで」
マユは、早速、洞窟温泉に入ろうとするわけだが、俺はそれを制した。
「マユちゃん、待ちいな。まだ瀬踏みをしてへん。どれだけ深いかわからんやろ」
しかし、深さを気にするようなマユではない。
「泳げるから問題ないわ」
そう言うと、マユは飛び込むようにドボンと入ってしまった。
「なんや、足が付くやん。丁度ええ深さやで。さあ、お母さんもハマちゃんも入り」
その洞窟温泉は、腰までの深さだった。しかも、実に快適な湯加減だ。少しぬるめの三十八度とかだろうか? 三人は、久しぶりに、シロアリの恐怖や浮世の憂さを忘れて、心からくつろぎ、その洞窟温泉を楽しんだ。
上の洞窟からLED照明を持って下りていたのだが、薄暗いので湯の色がよくわからなかった。それでも、濁り湯ではないことだけは確かだった。
そのうち、夜が更けてきたので、俺たちは寝ることにしたのだが、上の洞窟よりも更に暖かい洞窟温泉のそばで眠ることにした。
久しぶりに停電の寒さから解放された快適な夜になった。なぜだか、シロアリ出現の恐怖などサラサラ感じなかった。
あまりの心地良さに、翌朝を迎えても、なかなか目を覚まさない三人だったのだが・・・
「なあ、あんたら、そろそろ起きたら。とっくに朝だよ」
近くで誰かの声が聴こえた。
その声に、まず俺が目を覚ました。
仰向けのまま見上げると、白っぽいジャンプスーツを着た男が俺のそばに立っていた。
当然、俺は、ぎょっとしたが、何とか落ち着いて、その男に尋ねた。
「あなたは誰ですか? 何か御用ですか? ここで何をしているのですか?」
その男は答えた。
「質問は一度に一つにしてよ。まあ、いいや。順番に答えてあげるよ。まず、僕はこの下に住む者だよ。次に、用事だけど、アンタらには特に用なんかないよ。最後に、僕は地上の様子を見に来たんだ」
その男が答えてくれたことだが、俺は「この下に住む者」という答えに引っかかった。だから、そのことについて聞いた。相手がタメ口なので、俺もタメ口で言った。
「この下って、この下にも、まだ洞窟とかがあるの?」
「あるよ。ただし、洞窟みたいなちっぽけなモノではないけどね。この下にあるのは最低界というアンタたちが言うところの地底世界さ」
俺は、男の言うことが信じられなかった。というか、何を言っているのか、わからなかった。だから、詳しいところを聞きたいと思った。
「この下に世界があるって、この下は岩盤とかじゃないか。それって、大きな空洞みたいなものがあるということ?」
俺の問いにその男が答えた。
「空洞なんてチャチなモノではないよ。この地上の世界よりも、うんと広い世界さ。僕たちは、その世界のことを『最低界』と呼んでいるんだ。その世界は、ここから100㎞ほど下に広がっているんだよ」
俺は、頭が変な男だと思った。
「それは冗談か、そんなわけないだろ。100㎞ほど下なら、その辺はマントルだろ。超高温なのだから人が住めるわけがないじゃないか」
その男は薄ら笑いを浮かべながら俺に反論した。
「冗談はアンタの方だろ。何がマントルだよ。それはアンタたちの遅れた地学での話だろ。君たちの言うマントル層は、もっと薄いよ。だいたい、アンタたちの科学は遅れ過ぎだよ。あーあ、なんだか面倒くさいな。なんなら、僕についてくるかい。論より証拠だよ」
そのとき、マユと大ママが目を覚ました。しかし、まだ、寝ぼけている。
「なんや、ハマちゃんは誰と話しているねん?」
「うるさいな、もっと寝かせてや」
そして、マユの意識がしっかりとすると・・・
「えっ! なんやのん、この人!」
=続く=