「あの爺さんは脅迫者なんだよ」
「脅迫者?」
「うん。細かいことは言えないけど、ここに相談しにきた人の中に、あの爺さんから脅迫されてたのがいるんだ。でも、解決されちゃったらもう脅せないだろ? だから、俺たちが邪魔ってことなんだろうよ。――ま、ほんとにそれだけかわからないけどね」
「どういうことですか?」
「いや、ちょっと変に思えることがあるんだよ。本人の動きからすると、いま言った通りなんだけど、所々にそれを打ち消す要素があるんだ。ま、これは勘みたいなものだけどね」
「ふうん。でも、悪いことしてるの邪魔されて腹立てるなんて、ほんと意地の悪い人よね」
「そうでしょ! まったく考えられないわ!」
我が意を得たりとばかりにカンナは叫んだ。さっきの反省はもう忘れたんだろうな――そう思いながら、蓮實淳はコーヒーを啜ってる。それから、千春を見た。不機嫌そうにしてるけど、こいつはどうしたんだ?
「だけど、これからどうする気なの?」
「それが問題なのよね。なんか、あのジジイって評判いいらしいのよ。悪い話は聞かないんだって。そうなんでしょ?」
「ああ。それどころか、けっこうな人気者だ。俺たちがなんか言っても誰も信じないだろうな」
全員が溜息を洩らした。いや、千春だけは別だった。固まった表情で一点を見つめてる。カンナは首を振った。――もう、ほんと見境無く嫉妬するのやめてくれない? だけど、こんなんじゃ唐揚げとビールもなくなるんだろうな。楽しみにしてたのに。そう考えてると、なんだか悲しくなってきた。
「ねえ、でも、これってナントカ妨害ってやつじゃないの?」
「そう、そうよね。たまに聞くやつでしょ。私もそう思ってた」
「偽計業務妨害ね。確かにそうだ」
「だったら警察に言えばいいんじゃない? ビラはあるんだし、証拠にもなるでしょ?」
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