けっきょくのところ、彼らは有効な手立てを持つことなく日々を過ごしていたわけだ。犯人がわかってもなにもできなかった。いや、この時点における最善の方法など誰にも思いつかなかったというのがより正しいのかもしれない。

 

 

 本当に脅迫者だったとして――蓮實淳の思考はいつもそこからはじまった。

 

 

 その場合、あんなものを寄越したのは大和田や鴫沼の『事件』を解決したのが気に食わなかったからなんだろう。食い扶持を潰したってことになるんだからな。いや、待てよ。

 

 

 鼻に指をあてたまま彼は固まった。

 

 

 キティたちの報告では大和田との接触は断たれたようだが、鴫沼とはまだ繋がりがあるようだった。ということは、あの馬鹿息子にはまだなにかあるってことか? 『掛け軸事件』以外にも痛いとこを握られてるのかもしれないな。だから、会いに行ってるんだ。

 

 

 逆に考えると、大和田の件はもう終わってるからビラに書いたとも考えられる。腹いせ混じりにばら撒いたってわけだ。しかし、そうなると泉川のオッサンはどうなる? あれに俺は関わってないし、継続的に脅迫できるネタのはずだ。それをなんで書いた?

 

 

 だいたいにおいて思考はそこで止まる。そこから先へは進まないようになってるのだ。――まあ、これだけの情報では読み切れないんだろう。まだあの爺さんを知る必要があるんだ。

 

 

 だけど、なんで毎日あんなジジイのことばかり考えなきゃならない? これじゃ、まるで片思いの相手みたいじゃないか。ほんと、うんざりするわ。

 

 

 ただ、うんざりすることはまだつづいた。

 

 

↓押していただけると、非常に、嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村

  

現代小説ランキング

 

 

 

雑司ヶ谷近辺に住む(あるいは
住んでいた)猫たちの写真集です。

 

ただ、
写真だけ並べても面白くないかなと考え
何匹かの猫にはしゃべってもらってもいます。

 

なにも考えずにさらさらと見ていけるので
暇つぶしにどうぞ。