僕たちはシャワーを浴びた。
明るいところで見る彼女の身体は見事なものだった。同じ人間とは思えないくらい女性の身体が美しいというのも僕ははじめて知った。エロ本なんかに載ってるのとはまったく違って見えたのだ。際立った性欲を感じさせるよう仕組まれたものでない、ありのままの姿だった。湯が幾筋もそこに流れ、表面で弾かれ、全体を覆っていった。僕は純粋に美学的見地から眺めてるつもりだった。それでも下半身への血流は過剰になった。
「それ、どんなふうになってるの? さっきあんなにしたっていうのに」
静香は笑いながらそう言った。その日はじめて見せたほんとうの笑顔だった。彼女はそれを握りしめた。少々強すぎるくらいにだ。
「こんなのが入ってたの? そりゃ、痛いはずよね」
握りしめたまま上下に動かし、静香は囁いてきた。シャワーの音は土砂降りの雨のように聞こえた。
「こうすると気持ちいいんでしょ? ね、いつもひとりでこうしてたんでしょ?」
「ちょっと強すぎるよ」
「これくらいならいい?」
脚には胸があたっていた。それは非常に柔らかく、温かかった。
「ね、胸と口でしてあげようか? 私、この日のために勉強してきたのよ。ビデオ屋さん行って、エッチなの借りて見たの。『巨乳女教師の筆おろし』ってやつよ。君もそういうの見て、こういうことしてんでしょ?」
静香は大きな胸の間に挟みこみ、身体ごと上下させ刺激してきた。
「こういう使い方もあるのね、知らなかったわ。ねえ、どう? これで気持ちいいものなの?」
僕はうなずくことしかできなかった。それくらい胸の感触がすごかったのだ。
「いいの? いいって言ってくれないならやめちゃうわよ」
「いいよ。すごくいい。出そうだよ」
「ほんと気持ちよさそうな顔してるわ。いいわよ。好きなときに出しちゃって」
僕は二回目の射精を胸の上にした。静香はそれを手で掬い、不思議なもののように眺めていた。痛みがおさまってから二度目のセックスをし、しばらく抱きあって寝たあとにもした。
「これで一生分したってくらいやったものね。どう? 満足した?」
僕は激しい睡魔に襲われていた。疲労困憊状態だったのだ。
「まさか、まだし足りないなんて言うんじゃないでしょうね?」
「今日はもう無理だよ」
僕は呟いた。実際、それはヒリヒリしていた。
「あ、そう」
静香は転がりながら笑った。
「私、あのおばさんに悪いことしたわ」
「どうして」
「だって、どうしようもない淫乱だなって思ってたんだもの。こんなのたっぷりして、それでも足りないってどういうこと? ってふうによ。だけど、これも悪いもんじゃないわ」
「うん。悪いもんじゃない」
静香は大きな声で笑った。
「君はそんなふうに言えないんじゃない? あんなにたっぷり出して。それも気持ちよさそうな顔しながらね」
それはそっちも同じだろ――と僕は思っていた。でも、そうは言わなかった。
「ね、また日を改めてしましょう。私、また勉強してくるわ」
静香は上から覗きこんできた。そして、目が合うと唇をあわせた。それが彼女とはじめてしたキスだった。
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