深いため息をついて、
きよみんはトイレに行った。
「‥‥ねえボボちゃん。」
「ボボちゃん‥‥‥‥近い。」
「ご、ごめん‥‥」
「いいよ。慣れたから。」
「きよみん大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。
だって、トイレから出たら、いつもスッキリした顔してるよ。」
「‥‥。
ボボちゃん、もういい。
きよみんの読んだページ見てみて。」
「 いろいろ書いてる。」
「さっき、終わったあー!って喜んでたのにね。
撮り直すたび、スマホに向かって “よっしゃー!”って
気合い入れて。
読まない僕たちも緊張しちゃったよ。
でも まさか、
あと 1ページも残っていないところで録画、
切れてたなんてさ。」
「ねえ!マリア!寝てばっかりいないでさ!
こういういとき、なんとかできるパワーとかあるんでしょ!」
「 チュチュちゃん、
私だって何とかしたいけど、
つわりって、すごく眠くなったりするのよ。
悪いけど、他を当たってくれる?
誰でも、スムーズにいかないことはあるんだか ― 」
「待ってよ!ねっ!マリア!寝ないで!マリアってば!」
「あっ!!きよみんがトイレから出る!
チュチュ! 早く戻っ‥‥」
ガチャ。
‥‥
あれ、おかしいな。
私、こんなに散らかしてたかな?
疲れてるのかな。
ふう ― (深呼吸)
さ、もう一回行くぞ!
きよみんの部屋、自由空間にお越しくださって有難うございます。
今回の朗読作品が‥‥
カチッ。
途中でもいい。
一度、終わりと決めて読んだんだし、
あれでいこう!
「ボボちゃん、
良かったね。」
「うん。
僕たちだって、カメラ目線、
けっこう気を遣ってるからね。
やっと休める。良かった!」
「ボボちゃん、
良かったってそういう意味じゃ‥‥」
気がつかないだけ
光はいつも
私たちに
ふりそそいでいる
眉村卓/作 『妻に捧げた1778話』(毎日一話より抜粋)
朗読を聞いてくださる方は↓こちらを!
https://www.youtube.com/watch?v=2k1WfS_hWUI&t=84s
次回は、
こちらの本に収録されたショートショートを朗読します。
6月27日(土)苫小牧での朗読会 会場は↓こちら。