心の壁が崩れたきっかけ

 

 今更ですが、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」を見終わった。

 

 念のためネタバレにならないように書くが、作中でガンダムに搭乗した人間は、ガンダムから押し寄せてくる「データストーム」に体を破壊され、汚染されていく。ときには死んでしまう。

 

 データストーム、という名称に、作者の明確な意志を感じる。これは、まさに現代社会を生きる私たち、特にサラリーマンそのものだ、と感じるからだ。

 

 初代ガンダムからずっと、ガンダムシリーズには「人間と文明の相克」というテーマが底流していると思う。

 

 地球環境を破壊しつくして宇宙に新天地を求めざるをえなくなったり、モビルスーツで戦うために強化人間をつくりだしたり、宇宙進出したことの結果として地球出身者と宇宙出身者が対立し、戦争が起き、差別が起き、人々が殺し合ったり。人がよりよく生きるための文明が、逆に人間をむしばんでいく。「水星の魔女」でも、極秘開発されたガンダムの操縦試験をするために改造された強化人間が、大企業に使い捨てられる描写がある。これは資本主義社会そのもの、と感じるのは大げさだろうか。

 

 SNSに心を乱されて、鬱病になったり、承認欲求をふくらませて犯罪に走ったり、ネトゲにはまったり、課金の地獄に落ちたり、酒や煙草や薬物で心身をぼろぼろにされたり、放射能や農薬、食品添加物で生命の根幹をねじ曲げられたり、金儲けのために人々が大事にしてきた森を切り倒したり、プラスチックの破片が海を埋めてしまったり、そして人間が輩出した二酸化炭素が地球を「沸騰」させたり。文明が生身の人間をむしばむ、というガンダムのテーマは根源的であり、だからこそガンダムはいつまでも古くならない。

 

 私はこのブログで、自分が外勤にいたころのことばかりを書いていて恐縮だが、外勤時代には会社全体がデジタルメディア重視の姿勢を急速に強めている時期で、ネット上に掲載された自分の成果物への反応や、SNSのアクセス数、いいね数にどんどん意識を縛られていった。そして24時間いつでも仕事のことを考えるようになり、気付けば眠れなくなり、スマホから目を離せなくなった。そしてデジタルの煩雑な業務がどんどん上層部から降ってきて、自分の本来業務が何なのか見失い、これはヤバイと思ったころには、もうボロボロだった(もちろんそれだけが理由ではないが)。

 

 私が浴びたものを「データストーム」と定義するなら、その質と量は全然たいしたことないけれど、もっと激しいデータストームの中で今この瞬間もあがいているサラリーマンがいっぱいいる。ブルシットジョブの波に、誹謗中傷の嵐に、旧世代上司の無理解の吹雪に、襲われて、疲弊している。「社畜」と呼ばれ、さげすまれ、それでも今この職場で働く以外に道が見えない、それは外勤にいたころの私の姿だ。そのことに、とっても暗い気持ちになる。

 

 ネタバレになってしまうが、水星の魔女はラストで、(たぶん)データストームのない世界が実現される(ように見えました、違ったらごめんなさい)。私たちのこの世界にも、いつかそんな時代がくるといいのにな、と思った。

 

 ま、ブログ書いている時点でお前どうなんだって話ですけどね。だから私もブログのアクセス数やいいね数は見ないようにしています。でも1人でも誰かが読んでくれたらうれしいです。

 

 で、テーマの「心の壁が崩れたきっかけ」ですが、このアニメをきっかけにしてYOASOBIが好きになりました。アラフォーですが、若い人の音楽だからとはなから毛嫌いするのは馬鹿げていますね。心の壁を崩してくれました。

 

 

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