今期初撃ちでした。
猟場の一角の尾根を東向きに登り、途中北向きに道を反れ、落としもののある獣道をみつける。そこは北側の稜線から追われればここに出るだろうとの雰囲気のある獣道。それが右手にのびている。
エリア全体と獣道を通る者を確認でき、かつ広角で膝撃ちの姿勢を取れる位置を探して陣取りました。獣道上にタツマを張ったのは初めてかもしれません。お仲間のひとりが道に迷い、配置の完了が遅れましたが、わたしにとってはじっくり場所を選べる時間を持てたのは幸運でした。

勢子の犬を放つ合図から一時間あまり。犬の声より先にドカッ、ドカッと鹿の足音が響きました。三段角の立派なオスが走ってくる。読み通り獣道に出ました。しかし犬に追われてる鹿はフルギャロップではないものの上下の揺れは激しく、なにより正面を狙うには狭い。どうだろと思いつつかまわず一発かけました。途端、鹿はコースを変え尾根に向かいます。横向いたところでしめたと思いもう一発。しかし止まらない。「今の外したか‥!?」と一瞬よぎりましたが、ボルトを開き3発目を弾帯から引っこ抜いて薬室に送る。MSS-20の、2発撃った後の操作はまさに村田銃のそれですね。
鹿はその直後、2本の大杉の陰に隠れました。しかし隠しそこなった尻はうずうずと動きたがっている。「これは出てくる」。そう確信したのちに、鹿は首をすうっと木陰から現し、狙い定めた一発をかけました。しかし、止まらない!
一瞬胴体を震わせたものの、勢いはそのままに駆け上がり、尾根を切っていく。

長々と書きましたが、鹿の姿を捕えてから、尾根を切っていくまでの時間は15秒程度。結果は、尾根を越えた先の谷で息絶えていました。おそらく3発目の少々撃ち上げぎみになった弾が、心臓を捕え貫通していました。距離はおよそ25m。心臓を射抜かれても駆け上がるとは、やはり鹿は強いです。

それにしても、撃ったあたりを確認しても血が落ちていなかったのはどういうわけかと頭をひねります。
内側に溜まってたって少しくらいは血を引くものだろと思いました。血の痕を追えずにいたのも獲物の発見が遅れた要因です。バイタルを撃たれてドッと血を吹きながら逃げおおせるものもあれば、今回のようにうまく痕跡を追えないケースもある。難しいものだと思いました。

何はともあれ仕留めました。
合掌。ありがたくいただきます。
今回の調理法は、料理上手のお仲間に教わったアロゼです。弱火のフライパンにバターを乗せ、溶けたら鹿肉を投入。塩胡椒をふり、溶けたバターを回しかけながら時々ひっくり返す。肉に火が通ったら皿に上げ、残ったバターでソースをつくります。ハチミツと赤ワインを適量加え、とろみがつくまで煮詰めたらお肉にかけます。
ベリー系の甘いソースが鹿肉に合うとは聞いてましたが、これほどかよとたまげる旨さでした。
自分で倒した獲物には「すまない」と「ありがとう」が同居します。
無駄なくいただこうと思います。

後半に向けて鉄砲もみがいておこうと思います。汚れたままの鉄砲でまみえては獣に失礼、そんなふうに感じるようになりました。