謎の女は、何故か

自分の甥という30歳くらいの男性を連れていた。


甥…
にしては距離が近い。


甥ではなく、息子なのでは⁇
とふと思った。



もしくは、護身?の役割をする人。



公認会計士に仕事を依頼するような女性なのだから、インターネット上で名前が上がるのではないだろうか。

そう思って、フルネームでネット検索してみる。


出てこない。




不自然なくらい出てこない。






このご時世、SNSやネットで何かしら引っかかるハズなのに。


もしかして、偽名なのでは?

そんな疑惑が浮かぶ。







何千万円という遺産が予測される、亡くなった方。

聞いてもいないのに、その女性はお金の話をしてきた。







彼の面倒は私が見てきた。

闘病中、親族には連絡しないで欲しいと言われた。

末期は、自宅で自分とふたりで過ごしたいと言われたので、自宅で自分が看取った。

入院中の時は、1ヶ月で300万円を超える個室に入れてあげていた。

支払いなど全て自分に任せられていた。

彼のお金なのだから、生前に彼の為に使った。













自分が彼と十分な信頼関係を築いていたことや、全てを任されていたこと、
預金残高が少ないのは彼の為に使ったのだと主張しているかのようだった。




おかしい。




饒舌すぎる。

愛する人を看取った女は
こんなにも喋るのか。

笑うのか。

全く女っ気のなかった人が、こんなに饒舌で派手なタイプの人と最期を共にするのか。





もう、何がおかしいかはこれ以上言葉では言い表せない。

でもなぜか違和感を感じたのだった。




勘としか言えないが。









親族全員、きっと同じ事を思っていた。



でも、こんな時に事を荒だてたくはなかった。














結局、預金残高はかなり少ないものだった。

葬儀業界の知人にその話をしたところ
病気になった天涯孤独のお金持ちを狙って
愛人のようなポジションになって、
生きている間にお金を持っていくような人がいるらしい。



本当に、まさしくそれだった。
きっと。












でも、もう誰にも真実はわからない。






ただひとつ
その人は自分が愛する女性に看取ってもらい、
幸せな時間を過ごしたということを信じたい。

孤独だった自分に
寄り添ってくれたと

彼にとっては幸せな最期だったと。





それだけを願った。