タイトル通り、「犯人に告ぐ」の続編です。

主人公は、前作と同じ巻島史彦。

前作はかなり昔に読んだので、ほとんど内容を覚えてませんけど(^^;

かなり面白かったという記憶だけはあるんですが。

 

以下、思い切りネタばれを含んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語は、犯人側の話から始まります。

砂山知樹と健春の兄弟は、勤めていた振り込め詐欺の会社が、巻島率いる神奈川県警の特捜部に摘発され、仕事をなくしてしまう。

そこへ振り込め詐欺の指南役であった淡野から、新しい犯罪ビジネスの話を持ちかけられる。

それは、誘拐ビジネス。

淡野は、知樹が恨みを持っているミナト堂という会社から、社長とその子供を誘拐して身代金を取る計画を立て、実行に移すのであった。

巻島はこの誘拐事件の捜査の指揮権を与えられ、事件解決に向けて動くことになる。

 

淡野の計画の肝が、身代金を取る相手、この場合はミナト堂の社長ですね、この相手と信頼関係を築くということです。

本当の人質は社長の子供なのですが、まず二人とも誘拐して、後に社長だけを解放し、監禁している間に築いた信頼関係を元に、警察の関与しない形で身代金を払わせる。

理性的に話をして、手荒なことをしない、子供は丁重に扱う。

この人間なら約束を守る、身代金さえ払えば確実に子供を解放する、そう思わせる。

ストックホルム症候群というのもありますし、その辺りはなかなか説得力がありました。

 

犯人を信頼して身代金(1億円の金塊)を渡せば確実に子供は戻ってくるが、警察を頼ればどうなるかわからない。

身代金を払ってしまう方が良いと思わせるのですね。

しかし子供を助けるためとはいえ、個人的な理由で会社のお金に手を付けることは、頑張って会社を立て直してきた社員を裏切ることになる。

また、犯罪グループに手を貸すことで、社会正義にも反する。

社長が葛藤する場面は、色々と考えさせられました。

 

また、警察と犯人の騙し合い、駆け引きが面白く、なかなかに引き込まれましたね。

最終的に完全解決には至らなかったものの、個人的には納得の行く結末でしたし、なかなか良かったと思います。

ただ、肝心な事件解決に至るまでの経緯が、ちょっと物足りなかったかな。

偶然に助けられたというか、本来なら重要人物である秘書と身代金の金塊をフリーにしておくこと自体がおかしいのではないかという気もしますし。

淡野の最終計画は、私には予想できず確かに意外ではあったんですが、警察がちゃんとマークしていれば苦もなく防げたのではないでしょうか。

実際、念のための見張りが功を奏したわけですしね。

 

また、犯人側を描いた場面が多すぎるのではないかという気もします。

正直、知樹には感情移入できませんでした。

ミナト堂の不祥事により内定取り消しになった運の悪さには同情しますし、憤りを覚えるのはわかるんですが、だからといって犯罪に走る理由にはならないと思います。

人生を狂わされたと言っても、若いし頭も良いのだから、いくらでもまっとうにやり直せただろうに。

それなのに、犯罪によって一攫千金をして、それを元に事業をやり勝ち組になろうというのには全く共感できません。

 

長くなってしまいました(^^;

色々書きましたが、トータルでは面白かったと思います。

493ページもある長い小説でしたが、わりと一気に読めましたし。

最近の雫井作品は暗いものが多くて読むのがしんどかったですが、これはそうでもないですしね。

続編がありそうなので、もし出たら読んでみようと思います。