山田宗樹さんの小説です。
なかなか図書館になかったのですが、ようやく借りられたので感想を少々。

面白かったです。
個人的には、近年読んだ本の中でベスト5に入るんじゃないかな。
上下巻でかなりボリュームがありましたが、途中からは一気に読めました。

不老不死の技術が開発され、病気や事故、戦い等以外では人が死ぬことがなくなった世界が舞台です。
人が若いまま永遠に生き続ける社会では、社会の新陳代謝が起こらないため、様々な問題が起こります。
増え続ける人口、家族の崩壊、既得権益を手放さず君臨し続ける権力者。
そして、身体は老いなくても、心が生きることに倦み疲れ、そんな人間が増えることによって荒れていく社会。

それを防ぐために定められたのが百年法です。
これは、不老不死になる処置、HAVIを受けた人間は、それを受けてから約100年が経つと、生存権を失うという法律です。
具体的には、生存可能期間が過ぎた人間は、社会的なサービスを受けられるIDを停止され、ターミナルセンターという施設で安楽死処置を受けなければならないというもの。

物語は、百年法が施行される直前から始まります。
ストーリーの展開やラストは書きません。
でもとにかく面白い小説でした。
そして、色々考えさせられました。
人間が生きる意味とか、死についてとか、民主主義と独裁についてとか。

自分が若いまま永遠に生きられるとしたら、どうなのだろう。
死ぬのは勿論怖いですし、憧れはありますよね。
でも、今のような生活がずっと続くとしたら。
実際なってみないと判りませんが、飽きてしまうような気はしますね。
耐えられないんじゃないかなあ。
生命は、いずれ尽きるから、限りがあるから、喜びも悲しみも生まれてくるような気もしますし、永遠の命というのがそもそも歪んでるんでしょうね。
まあ、若いままでいられても病気で死ぬ確率がないわけじゃないですし、事故とかもありそうだし、永遠に続くことはないとは思うけど。

もし、百年法の適用対象に、自分がなったとしたらどうだろう。
諦めて死を受け入れるのか、それとも拒否者になって足掻くのか。
それも判らないけれど、生存可能期間というのが他者によって定められてしまうのも、うーん、嫌だなあという感じです。
まあ、HAVIを受けるのは自分の意思次第なので、約100年で死ぬことも自分が選択した結果なわけですが。

つらつらと止めどない感想になりましたが、読んで良かった本だと思います。