加藤元さんの小説。
この作家さんの作品は初めて読みましたが、良かったです。

タイトルにある、十号室に住み、ひっそりと亡くなった女性はどんな風に暮らしていたのか。
そして、彼女が住むアパートで、過去に起きた幼児失踪事件。
各章が、それぞれの部屋で暮らすアパートの住人の視点で書かれていて、それを追っていくと、真相がだんだん明らかになっていくというストーリーです。
ちょっとしたミステリ要素もあるけど、それよりは、アパート内の人間模様や心理描写の方がメインかな。
心に残る良い台詞が多かったように思います。

ちょっと泣けてしまったシーンもありました。
子を想う親の気持とか、どうも弱いですね。

若い頃は本を読んでも、映画を見ても、あまり泣くということはなかったんですけどね。
ああ、でも、ダニエル・キイスさんの「アルジャーノンンに花束を」だけは何回読んでも泣いてましたけど。

まあ、それはそれとして、基本的には歳を取って涙腺がゆるんできたように思いますね。
人の気持ちを多少は思いやることが出来るようになったのかなあ、と良い方向に捉えることにしています。