サイエンスものを読んで、頭が凝ってしまったので、「青い壺」と併せて購入していた有吉佐和子著「恍惚の人」を読んでみました。


これは1972年、今から50年以上前の刊行。

調べて見たのですが、老人福祉法というのはすでにあったものの、介護保険制度(2000年から)はなかった時代。

出版当時結構インパクトを与えた書籍のような記憶があるのですが、当時は読まずで、今、改めて読んでみた次第。


癌よりも認知症にだけはなりたくないという人が今や少なくないと思うのですが、その認知症に強いスポットライトを当てた嚆矢のような小説だった気がします。


いやぁ、でも本質は今もほとんど変わっていないですよねぇ。


主人公は法律事務所に事務職として勤める昭子。

商社に勤める夫、受験生の長男、そして、同じ敷地の別棟に舅夫妻と住んでいます。

しかしある日姑が頓死、舅の認知症が顕在化し、てんやわんやが始まります。

当時、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームというのはあったものの、キャパシティは極めて小さく、満員。

有料老人ホームに至っては、心身共に健康な高齢者が対象ということで、今風に言えば「自立」が前提。

認知症というのは高齢者の精神病という位置付けで、どうしても隔離したいのなら精神病院へ入れてください、と福祉担当の人に言われる始末。

精神疾患に対するスティグマは今も現存していますが、当時は今より強かったのかもしれません。

そして認知症は、制度の狭間に落ち込んで、事実上家庭内で解決せざるを得ない状況。

いや、正直今も解決なんてしていないのですが。

のしかかる負担に四苦八苦しつつ、自分もこうなるのかとの不安に苛まれ。。。

かつ、自分の役割の喪失という葛藤も抱えながら、悶々とする昭子。

他人事じゃないですよね。

途中から、舅は好々爺然となるというのか幼児退行のようになって、一時期やや平穏な時を迎えるのですが。

そうは問屋がおろさない展開が広がっていくのです。。。

もはやホラーですね。

昭子さんの腹が徐々に座っていく様が、なかなかに凄かったです。