私の近所には、少し不思議な猫がいる。

不思議というより、あまりにも規則正しい猫だ。

毎晩7時頃になると、必ず同じ路地の奥に姿を現す。

最初は偶然だと思っていた。

仕事帰りに何度か見かけただけだった。でも、何日経っても同じ時間、同じ場所に現れる。

黒い毛に、鼻の周りだけ白い猫。

私は勝手に「ハナちゃん」と呼ぶことにした。

ある日、気になって少し待ってみた。

7時になると、路地の入口からゆっくり歩いてきて、まるで決まった場所で待ち合わせをしているように塀の下に座った。

すると少しして、近くの家に住むおばあさんが小さな器を持って出てきた。

 

 

「来たの?」

優しく声をかけると、ハナちゃんは待っていたかのように近づいていった。

聞けば、この猫は何年も前からこの町を行き来している子だった。

おばあさんは最初、かわいそうでご飯をあげ始めたそうだ。

それがいつの間にか、毎晩7時にやって来る常連さんになったらしい。

数日後、家でふと思った。

この猫を知っている人は、他にもいるのだろうか。

そこで久しぶりにStrayKittyアプリを開いて、近所の猫の情報を見てみた。

すると、路地の近くに登録されている猫が一匹いた。

写真を開くと、見覚えのある顔。

やっぱりハナちゃんだった。

登録された情報には、こんな記録が残っていた。

「毎晩7時頃に現れます。人懐っこいけど、急に姿が見えなくなると心配になる子です。」

コメント欄には、近所の人たちの小さな記録が並んでいた。

「今日も会えました。」

「雨の日は少し遅れて来ます。」

「昨日は別の路地で休んでいました。」

短いコメントばかりだったけれど、その中には一匹の猫を長く見守ってきた人たちの優しさが詰まっていた。

その時、私は気づいた。

私にとって偶然出会った猫は、誰かにとっては毎日待ち続ける大切な存在だったのだ。

猫は一匹で生きているように見える。

でも本当は、町のあちこちで小さなつながりを作りながら暮らしているのかもしれない。

今日の夜7時。

私も少しだけ路地の先を見てみよう。

ハナちゃんが、また出勤してくるかもしれないから。

 

 

 

 

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