今日はいつものように近所を散歩した。
特に用事があったわけではない。ただ少し外の空気を吸いたくなって、いつもの道をゆっくり歩いていただけだ。
最近は散歩をすると、自然と猫たちの姿を探してしまう。
駐車場の隅や古い塀の上、静かな路地の奥。
人にとっては何気ない場所でも、猫たちにとっては大切な居場所なのかもしれない。
今日もそんなことを考えながら歩いていた。
すると路地の先に、一匹の猫が座っているのが見えた。
何度か見かけたことのある猫だった。
初めて会った頃は少し近づくだけで逃げてしまっていたが、最近は以前ほど警戒しなくなったように感じる。
もちろん触れるほど近い関係ではない。
それでも顔を合わせる回数が増えると、どこか親しみを感じるようになる。
今日の猫はいつもと少し違っていた。
私が近づいても、その場から動かなかった。
ただ静かにこちらを見ている。
しばらくの間、猫と目が合った。
ほんの数秒だったと思う。
それなのに不思議と長い時間だったような気がした。
その瞬間、心の中でこんな言葉が聞こえた気がした。
「今日も来たんだね。」
もちろん本当に猫がそう思ったわけではないだろう。
でも、そんな気持ちになった。
猫も人のことを覚えているのだろうか。
いつも同じ時間に通る人。
何度も見かける顔。
聞き慣れた足音。
私たちが猫を覚えているように、猫たちもまた私たちを覚えているのかもしれない。
しばらくすると猫はゆっくり立ち上がった。
そして路地の奥へ向かって歩いていった。
急ぐ様子もなく、振り返ることもなく、自分のペースで。
私はその後ろ姿を見送りながら、再び家へ向かった。
特別な出来事があったわけではない。
写真を一枚撮っただけの、ほんの短い時間だった。
それでもこういう何気ない瞬間ほど、なぜか心に残る。
猫たちは今日もどこかで、自分たちなりの一日を過ごしている。
またいつか同じ場所で会えたら、その時も静かに挨拶をしたいと思う。
「元気だった?」
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