昨日、仕事帰りに思い切って近所のペットショップに立ち寄りました。

いつも安い大容量のドライフードばかりあげているのが少し気になっていたんです。最近は朝晩も涼しくなってきたので、たまには特別なごちそうをあげようと思いました。

そこで選んだのは、なんと450円相当もするプレミアムサーモンムースの缶詰。

決して安くはありませんでしたが、マンションの駐車場によく現れる常連猫「ノラン」が喜んで食べる姿を想像すると、まったく惜しくありませんでした。

家に帰って缶を開けてみると、これがまた驚くほどいい香り。

魚臭さはほとんどなく、正直なところ私が食べたくなるくらいでした。

期待に胸を膨らませながら、駐車場の隅にあるノラン専用のごはんスポットへ向かいました。

するとちょうど遠くからノランがのんびり歩いてくるのが見えました。

「ノラン、今日は特別なごちそうだよ!」

そう声をかけながら、缶詰をお皿にきれいによそいました。

ノランはいつものように尻尾をピンと立てながら近づいてきます。

私は心の中で、

「さあ、驚くぞ」

と得意げになっていました。

ところが。

ノランはお皿の前で立ち止まり、何度かクンクンと匂いを嗅ぎました。

そして突然、前足で土をかけるようなしぐさを始めたのです。

猫好きなら誰でも分かるでしょう。

気に入らないものを隠そうとするときの、あの動作です。

つまり――

私の高級サーモンムースは「いらないもの」認定されたのでした。

私はその場で固まりました。

信じられなくて、指先に少し取って鼻先へ差し出してみました。

するとノランは顔をぷいっと背け、

「本気でこれを食べると思ったの?」

と言わんばかりの目でこちらを見ました。

そして何事もなかったかのように、いつものドライフードの方へ歩いていき、カリカリと食べ始めたのです。

もう呆れるやら笑うやら。

空になった缶を持って立ち尽くしていると、ちょうどゴミ出しに来た103号室のおばさんと鉢合わせました。

私の手にある缶を見るなり、おばさんは大笑い。

「その子、それ絶対食べないわよ。前にも隣の棟の大学生さんが同じことしてフラれてたもの。」

聞けば、ノランはこの辺りでは有名なグルメ猫なのだそうです。

近くに住むおばあさんが毎朝ゆでた鶏むね肉をあげていて、さらに会社員の方が和食店の魚を持ってきてくれることもあるとか。

どうりで野良猫とは思えないほど毛並みがツヤツヤなわけです。

私は勝手に「かわいそうな子」だと思っていましたが、とんでもありません。

むしろ地域の人気者でした。

その夜、以前インストールしていたStrayKittyアプリを開いてみました。

地図でノランの縄張りを探してみると、すでに誰かが「チーズ」という名前で登録していました。

投稿を読んで思わず吹き出しました。

「安いおやつは見向きもしない。特定メーカーのかつお味しか食べない。」

コメント欄には、

「私もフラれました。」

「うちより食費高そう。」

「完全に王様です。」

など、被害者たちの証言がずらり。

どうやら知らなかったのは私だけだったようです。

私が『お腹を空かせているかも』と心配していた猫は、実際には私よりずっといいものを食べていました。

もしかすると食費は私以上かもしれません。

結局、残ったサーモンムースは何でも喜んで食べる食いしん坊の黒猫「クロ」にあげました。

ノランについてはもう学習しました。

これからはいつものドライフードだけにしておこうと思います。

財布には少し痛かったですが、元気に暮らしていて、たくさんの人に愛されていると分かっただけでも十分です。

さて、明日の朝はどこのごはんスポットで優雅に尻尾を振っているのでしょうか。

 

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