趣味と好みが似ていた人 | 同時に何人も愛せる人間の話

趣味と好みが似ていた人

この広い世の中で

趣味がほとんど一致する人に出逢えたことは

とても素敵なことだと思います。

だから大事にしたかったのに。

Tさん

映画を見終わった後に、何時間も語り合った人なんて初めてだった。

小さなことなのに

セリフ一つの意味や

表情だったり、

エンディング曲の良し悪しを

ずいぶん語り合った

好きな映画や、趣味が似通っていて、

出逢って日も浅いのに、

お互いを知り尽くしているように思えた

私は歴史が驚くほど疎くて、

知らないということは恐ろしいと、

教えてくれたのもこの人だった。

知らないことを知ることも

教えてくれた。

Tさんはちょっと固定観念が強かった。

私と付き合うことによって、

それが少し柔らかくなった。

二人で成長していけると思っていた

でも

時間が経つと

診えてきてしまった。

趣味が同じではないということ。

好みが同じではないということ。

似ていたのに、同じであると

思い込んでいた


お互いがお互いに合わせていた

お互いがお互いに歩み寄っていた

気付かれまいと。

お互い。


気付くことが出来たから、嫌いになるわけがない。

むしろそこからがまりのはず。

本当の始まりのはず。

だった。

未熟だった二人には、

そこから始まることができなかった。

きっと私が本当のTさんを受け止めることが出来なかった

未熟な人間だったのが原因。

受け止めようと背伸びしすぎていた自分に気付いてしまった。

背伸びしていた側で支えているTさんが潰されていくのに気付いてしまった。

別れを切り出すのにそう時間はかからなかった。

嫌いになって別れたわけじゃない。

そんな自分勝手な言い訳を言いたくなくて、

強がって別れたけれど、

今でも想っている。

一緒に観た映画、一緒に行った場所、一緒に遊んだゲーム、

どれも忘れてない。

たくさんのことを教えてくれたことに

とても感謝してます。

だから、

忘れない。

そして

今も

している。



Tさん


生きているならそれでいい。

死なないでいてくれればいい。


逢いたいなんて、

我儘は言わないから。


生きて。