プッチーニ作曲。
歌劇『トゥーランドット』第三幕。


※(お話しの流れ。割愛気味に)

トゥーランドット姫から出された三つの謎を解き、約束通りトゥーランドット姫との結婚を求むカラフ王子。しかし結婚を躊躇い頑なに否むトゥーランドット姫に、「日の出迄に貴女がわたしの名前を解き明かしたら、この求婚を無かったことにし処されましょう」と申し出る。
この夜、トゥーランドット姫から下された「この旅人、名無しの男の名前を解き明かすまで誰一人寝てはならぬ」の命を受け、北京は民衆一人残さず、カラフ王子の名を解き明かすため寝ずに調べ始める。
そうして、白んでくる夜空を見上げながら勝算を得たカラフ王子が歌う、




王子カラフのアリア(独唱)。



『Nessun dorma (ネッスン・ドルマ)』

「誰も寝てはならぬ」




Nessun dorma!

Nessun dorma!

Tu pure, o Principessa, nella tua fredda stanza, guardi le stelle che tremano d'amore e di speranza!

Ma il mio mistero e´ chiuso in me, il nome mio nessun sapta`!

No, no, sulla tua bocca lo diro`, quando la luce splendera`

Ed il mio bacio scioglera` il silenzio che ti fa mia!

Dilegua, o notte!

Tramontate, stelle!

Tramontate, stelle!

All'alba vincero`!

Vincero`! vincero`!





(和訳)

誰も寝てはならぬ!

誰も寝てはならぬ…

貴女もそうだ、王女よ、
貴女の冷たい部屋の中で、 愛と希望に 震える星をご覧なさい!

けれど、 私の秘密はこの胸に秘めれている、 私の名前は誰も知らないだろう!

いや、いや、 貴女の唇に私が告げよう、 光の輝く時に

そして 私の口付けが 貴女を私のものになる沈黙を破った時に!

おぉ、夜よ 消え失せろ!

星よ、沈むのだ!

星よ、沈むのだ!

私は勝利を得るだろう!

勝利するのだ! 勝利する!





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トリノ冬季五輪開会式で故ルチアーノ・パパラッティ氏が歌い、フィギュアスケート女子で荒川静香選手が金メダルを獲得したFS『歌劇トゥーランドット』でドラマチックに使われていた、
カラフ王子の有名なアリアで、『トゥーランドット』を代表する一曲ですね。

クラシック音楽やオペラに関心がなくてもメロディを耳にすれば、
あ、この曲のことか! とお分りになる人が多いと思います。

テレビ朝日系で放送するフィギュアスケートのグランプリシリーズ、オープニングで次々表れる日本人選手の決めポーズと共に流れている男声のオペラが、
このカラフ王子の『誰も寝てはならぬ』です。
因みにフジテレビの方はバレエでお馴染みの『ボレロ』ですね。

今季、宇野昌磨選手と本田真凛選手のFS『トゥーランドット』の終盤に聞こえてくる歌が『Nussun dorma』です
(本田選手の方は女声なので、もしかしたら違うかも知れませんがメロディは『Nussun dorma』でした)。


『トゥーランドット』はプッチーニの遺作で、実際は未完のオペラですが。
本当に素晴らしく、その中でも『誰も寝てはならぬ』は日本でもポピュラーなテノールのアリアとなっています。
一時期日本で大人気過ぎて、テノールのリサイタルでは必ず歌う一曲の様になってしまい、
「テノールはテノールでもカラフの声域ではない人も歌わないといけないから大変だ」とテノールの方が仰っていたほどでした。


聴きたいとリクエストが募るのも解るくらい、
本当にメロディが優麗で雄々しくテノールの方の美声が映える、大変ロマンチックな歌ですよね。



歌詞はカラフ王子の心情、
もうじき訪れる夜明けに自らの愛…トゥーランドット姫への求婚が成就する歓びや勝利を歌っています。



和訳だけを読むと結構カラフ王子の押しの強さを感じますが、
そこに至るまでの過程…物語のあらすじと登場人物たちの心境、物語の中で与えられた役割(何を象徴とした人物なのか)を、
特にカラフ王子に恋心を抱く従者リューの存在と想いの深さを知って頂くと、
感じ入れるものがあると思います。
この後、リューの存在が際立つ物語最大のハイライトが訪れます。

リューがいなければトゥーランドット姫は変われなかった、
愛の勝利とは何なのか伝えてくれるのも、物語の影の主役は紛れもなくリューです。


『歌劇トゥーランドット』と検索すると、
あらすじやアリアの歌詞なども紹介してる素敵なHPが沢山あるので、
一度ご覧になってほしいです。


(以前、従者リューをリンと書いてしまっていて、間違いに気付き修正する時、
リンって誰なの?『北斗の拳』か…って独り突っ込みしました。
『北斗の拳』のリンちゃん、アニメ版『~Ⅱ』になるとバッドと共に大きくなってて始め誰か判らず驚いた記憶があります。ケンシロウがバッドにリンを託し、再び旅立つラストに納得しました。ケンシロウは留まれない漢ですしね。)





イタリア語詞と和訳があると意味が解って良いですよね。


オペラ作品に多い二大言語のイタリア語とドイツ語は、
日本ならではのローマ字読みで
(適切な発音にはなりませんが)
大体80%は音読できる言語なので、
日本人ならイタリア語詞を見ながらなんとなくローマ字読みで歌う事が出来ます。

是非みなさん、試しに声に出して歌ってみて下さい。

『Nussun dorma』のサビ
(こういう表現でいいのか迷いますが、聞いてて盛り上がってくる一番耳馴染みのある箇所)は、

「Ma il mio mistero e´ chiuso in me,
il nome mio nessun sapra`!

マ イル ミオ ~



けれど、私の秘密はこの胸に秘められている
私の名前は誰も知らないだろう!」

ここから始まります。
分かりやすいですよね。



またイタリア語は日本語の「あいうえお」に近い母音ですし(子音で終わることも少ないです)、
オペラは口を縦に開いて(ゆで卵を咥えるように)発声するので、
ローマ字読みでも堂々と歌いますと気持ち良いんですよ。

私はオペラではありませんが、
『Con te partiro´ (君と旅立とう)』

(英語名 「Time to say good-bye」。サラ・ブライトマンの歌声で大ヒットした、イタリア語のクラシカルクロスオーバーの一曲。
もともとはイタリアの歌手アンドレア・ボチェッリ氏の歌で、デュエットとしてサラ・ブライトマンが参加し、後にソロでカバーしたバージョンが有名になりました。)

大好きなこの曲をたまに歌ったりします。ローマ字読みで(笑)。



真面目な話、イタリア語の歌、語末の母音を発声するのでストレス発散や滑舌改善に良いと思いますし、
歌手になりたい人にはオペラをちゃんと聴いて、学んでほしいですね。



オペラは、当然ミュージカルとは違ってマイクは使わないんです。
だからこそ歌手(声楽家)の方の身体から発せられる生声、
その歌声がコンサートホール中に響き渡るそのエネルギーは、
生で聴くと本当に本当に凄いんです!
自然と目がその人を追ってしまうくらいのパッションが有りますし、
アリアは特に歌手の方が演ずる人物の見せ場でもあるので気迫というか魂が伝わって来て、心掴まれます。


オペラはほんと総合芸術なので、人生で一度は生で鑑賞して頂きたいものです。
機会があったら是非とも見に行ってみて下さい。





私も一度は、『Nussun dorma』生で聴いてみたいですし、
『トゥーランドット』も見てみたいオペラ作品の一つです。












※ 昔、NHK教育テレビ(現 Eテレ)のパヘット系児童番組に、ピン、ポン、パン、という三人組のキャラクターが出て来る作品があったんですけど。
今になって思うと、このピン、ポン、パンの名前は、子供達が覚えやすくてポップなネーミングというだけでなく、
歌劇『トゥーランドット』に登場するトゥーランドット姫の臣下ピン、ポン、パンの三人からとられた名前かも知れませんね。
ピンポンパン、
球が弾むポップな響きでありつつ、中国の国民的遊技卓球をも連想する響きですね。