4月中大変お世話になったu-nextの無料体験が終わったので、netflixに出戻りました。
友達に「netflix入ったらこれ!」とおすすめされた、『マリッジ・ストーリー』を観ました。
凄いよかった…。
心理的な細かい裏付けまでしっかりした脚本を、丁寧に、いい役者と作ってるなーという印象です。理由は後述もしますが、演劇が好きな方にもおすすめしたいとです。
以下、感想ですが、例のごとく細かすぎる選手権を開催しております。とっても個人的に♡なところを挙げています。
観たよという方は、同意、または、「うーん」しながら読んでくださると嬉しいです。
※これを教えてくれた子がスカーレット・ヨハンソンを“スカヨハ”と呼んでいて、「「えーなにそれ通っぽい」」(心の声)となったので、10年来の付き合いの勢いで“スカヨハ”と呼んでいます。ほんとの通の人、おこらないでください。
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★床を掃除してるのに足をどかさない息子
ヘンリーの髪を切ってるシーン。
むしろ靴の上を掃いている。わざとか??
★くまを頭に敷いて寝る息子
ベッドの取り合いめっちゃ可愛かった。
しかも、このくまはうつ伏せで圧迫されているので窒息してます。
さらに、このくまは、後にLAでベッドヘッドの隙間に押し込められます。不憫。
★「舞台主任と浮気した 」
※ここまで全部フリ というテロップをつけたい。
ノラに事の次第を話すニコールの神モノローグ。
★アイムナーバス
封筒渡すのナーバスすぎるおねぇちゃんかわいい。
緊張すると前後に揺れて自分でリズムを取りつつ、腹式呼吸になってしまう舞台俳優あるある。
★うんち中のヘンリーとドア越しに会話するチャーリー
間とワードの紡ぎ方が熟練の域。
★パイから話が悪化した
問:この時のチャーリーの気持ちを答えなさい。
答え:天才助成金の話で it's my day! となり、事態が好転していると感じていたのにまさかという気持ち。
こんな時でも客観視できているあたりに演出家としてのチャーリーの才能を感じます。
こんなに哀しい「夢を見ている気分だ」は初めてです。
チャーリーはブロードウェイという単語をやたら持ち出したり、ちょっと誉められたがりで、この辺りにアダルトチルドレン的家庭環境を見てしまって切ない。
★ジェイ・マロッタのオフィスの椅子に置いてあった“eat, drink and remarry 食べて飲んで再婚しろ!”のクッション
もしかしてこのおじさん面白いのでは…?
★ねこかわ
この映画の一番の見どころといっても過言ではない、バート・スピッツのオフィスにいた毛並みの素敵な猫。
「その猫は懐かない」に込められた重みにアカデミー👏
この猫とは2番目の妻の時からの付き合いで、離婚して一人になるたびに撫でてみようとか試みるんだけど未だに相容れることはなく(ただし妻や娘には懐く)、猫も割と歳なのでバートは「オレとお前どっちが先かな」とか思っているんですね。この猫が、最期に陽の当たる部屋の安楽椅子でポックリ逝くときに初めてバートの膝に乗ってきたところは涙なしには見られないです映画史に残る名シーンです。(ここまで妄想)
★ボウイ様
ハロウィンで披露されたニコールの仮装。
いや、かっこよすぎやん(真顔)
ビンをあけちゃうとことか、ニコールは完全に女子校の王子様ですね。ありがとうございます。
★お湯が出ない別室のポット
陰湿。
「女は完璧を求められる」と語るシーンと合わせて、多分腹筋バキバキな女弁護士ノラの闇が見えて好きでした。
ローラ・ダーンさんのノラが、開始1秒で依頼人の心を開かせてしまうとか言葉だけだと無理ゲーなのに、役者のおかげで説得力が出てて、「この人なら」って思えるのもわかって、役者さんすごいなって思いました(感想)。
※※※
昨今、小道具や衣装の色合わせに気を遣っていると感じる映画はあるのですが、この映画はそれだけでなくてタッチにまで注意を払ってる感じがします。そういう絵画的な画作りがとっても素敵でした。
例えば、バートのオフィス。
壁の新聞の切り抜きが陽に焼けていたり、ゴッホの部屋の絵みたいな色合わせだったりで草臥れた古い感じをだしていたり、しかも端が丸く暗くなるピンホール効果まで入れてセピアを仕込む徹底よう。
ハロウィンにホテルでヘンリーを待ってるシーンも、壁とか絵のフレームを重ねた構図と、テレビの光が変わる感じがすごく綺麗でした。ミイラ男が居眠りしてるっていうのもなんかそういう絵っぽい。
特に後半はニコール側とチャーリー側を映像の明るさでかなり意図的に対比させてると思いました。
あと、キャラクターによって壁に飾られてるピクチャーを変えているのが観ていてとても楽しかったです。
また、最初にも書きましたが、この映画は全体的に舞台でやる演劇っぽいなと思いました。
この映画の最初も、スポットライトで浮かび上がったスカヨハの顔から始まります(とりあえず顔がいい。)。とてもガーランド?アンドリュース?みたいな往年のミュージカル映画風。
脚本の台詞とか構成とかもそれっぽい。
叙述から始まって叙述に戻ってくる感じとか、ニコールのノラのオフィスに初めていった時の長台詞とか(これ素晴らしかった!!)、長回しの喧嘩とか。
「あ、ここでお客さんが笑うだろうな」とか、これをそのまま舞台化したところが想像できる、素晴らしい脚本だなと思います。
音楽も結構控えめな、よりそうような感じがとても良かった。山田洋次というかヘンデルというかイングリッシュマフィンのCMというか…。
結構お芝居だけの演劇でこういう音数少なめの音楽を入れがちな印象があるので、この辺も演劇っぽいと思った要因かもしれないです。
あと、チャーリーがバーで歌っちゃうところ。
私の大学の先生も、「ミュージカルは感情が昂りすぎて歌ったり踊ったりしてるのよ」と言っていたし、これはとってもミュージカル。
この歌に全部が詰まっていた。
チャ―リー的に全てがここにつながってる感じがぐっときました。
今すぐブロードウェイに持ち込んでくれ。
※※※
これを書きつつ、窓の外からリコーダーのエーデルワイスが聞こえてきてほっこりしました。
小学校とかは通常とは言わないまでもずっと稼働していると聞きます。まだまだ気が抜けませんが、どうぞご自愛ください。
ノア・バームバック監督『マリッジ・ストーリー』(2019年、アメリカ)
2020/5/8 鑑賞