『パラサイト』を観ました。
いや、めっちゃよかった。
以下、ネタバレの他の何物でもない好き語りです。観てない人は見てはいけません。
私はファースト・デイに1200円で観たのですが、「これ3000円出せる」ってなったので、観てない人は今すぐ観に行ったらいいと思います。
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ド頭のadidasの時点で、『ハイ!!確定。』って思った。元気な良作ですおめでとうございます。
最初の方にピザ屋の店員が出てくるんですが、その制服に糸が引率れてるところがあったの気が付きましたか?
そういう誰が観てんねんってところまで造りこんである作品です。信頼しかないですね。
タイトルの”半地下の家族”というのは、文字通り”半地下の家に住んでいる”、というのと社会的立場が”地上と地下の間”というののダブルミーニングになっているんだと思います。
嵐の夜にキム一家がチョン家から抜け出して、下へ下へ、ひたすらに階段を下って半地下に帰るのがせつなかった。
ベテラン浪人生、長男ギウを演じてるチェ・ウシクさん、加瀬亮さんみたいな、なんかいい顔。
ギウは石と友達です。この映画はある意味、ギウの石との出会いから別れまでの物語とも言える。
家が浸水したときも「石がついてきた」とか言って、避難所で石を抱いて寝ちゃう(笑)。ちょっとかわいいと思う。
あのシーンはそれぞれの価値観、特に何が一番大事かが見えてたと思うのですが、あの石って最近手に入れたものだし、(韓国の価値観わからないけど)縁起物で実用的ではない。
石を貰ったところから一家の幸運が始まったから、それに縋ろうとしたのかもしれない。避難所でおとんが無計画だってわかったから、ちょうどこの石はカタをつけるのにちょうどいいと思ったのだろうな。
なんかそこで石を選んじゃう、ギウっていう人間に、おかしみを感じました。
ギウは、地下に住んでた男によって石(ズッ友)で殴られるんですが、倒れたギウから流れた血と水が、混ざらずに広がっていく画がすんごい奇麗でした。
私の中で韓国ってめちゃくちゃ水の扱いが上手い、特に雨のシーンが得意なイメージがあります。
韓国ドラマ見てるとシリーズの中盤に必ず、びしょびしょのまま雨宿りした電話ボックスでキスしたり、雨の中土下座して王様に許しを請うヒロインを本命が庇いに行くシーン(これは麗)がある気がする。そして、後半いい音楽と共に回想が入る(当社調べ)。
同じく、浸水した半地下の家のシーンで、長女ミギョンが逆流した汚水を吐き出してる便器に座ってタバコ吸ってるのとかすっごいよかった。
なんかもう言葉にできないんだけど最高でした。
韓国人の情感と雨って合うんじゃ~
この浸水の時、真っ先に自分が昔取ったメダルに走ったおとん(酔っぱらうと自分の昔自慢するタイプと見た)。
韓国ドラマの例にもれないろくでなし。
凄い演技がよかった。
このおとんに関してはどっちやねん案件がふたつあって、
一つ目は、チョン・ファミリーの家で好き勝手してる時に、オモニの胸倉掴んでたシーン。
あれが本当にフリなのか?という。
すっごい演技が上手くてわかんなかったんですよね。多分本気のつもりで演じてて、どっちにも見えるように調整してるのかなとも思いました。
もう一つは、元家政婦の息を確認するんだけど、その生死がわからないんですね。
それで、おとんが安堵した描写だけあるんだけど、「え、これどっち?」みたいな感じで引っ張られるわけです。
「「もしかしたら、この男は、元家政婦が死んだことに安堵してるのか??」」
と。
それってめっちゃ怖い。でもそのバッドな方もあり得るってわかってるから、心臓がギシギシ言う。
結局、元家政婦は生きてたんですが、このどっち?どっち?みたいな塩梅が凄いよかったです。
韓国の映像演技ってすごく大味なイメージがあって、とにかくわかりやすく!なキャラクター演技だと思ってたんですけど、私の韓国観はチャングムで止まっていたみたいです。反省。
でも、その伝統も活かされていて、この元看護婦と、その夫、地下に住んでた男もすげぇホラーでよかったです。
しっかりと恨みを残して逝く元家政婦とか、流石韓国。
金持ちチョン家の息子ヒョンジョンのトラウマ、顔半分だけ覗いてる幽霊、の目!!
北朝鮮やべぇ。
私、社長家族が出かけて、雨降ってきた時点で、「「これ絶対、途中で社長家族が帰ってくるやつや…」」と思って、共感性周知で直視できなかったんですけれど、その前に元家政婦が来るっていう予想外の展開。
もう、やられましたよ監督ぅ。全力で媚び売りたい才能。
インターホンのびしょびしょの変わり果てた姿とか超怖かった。にかーって!!
だって監督狙ってるんだもん。あんだけ大雨だったらメガネ外すよ普通???
この地下の家族がいるおかげで、観客の中で最初は色物だった半地下の家族がいつの間にか普通に感じだしていきます。
この辺で「家族全員が仕事を得たってことは、仕事を失った者がいる」っていう台詞も効いてくる。
全体的に伏線がえぐい巧妙。
キム家が机の下でチョン夫婦の会話を机の下で盗み聞きするではないですか。
我々観客には、あそこでおとんの中に事件の日の動機がつくられていくのが目に見えて分かるのですね。
おとんもあんなに素敵なご主人一家だって言ってたらこそ、一度不信感を持ったら最後、悪気のない格差が鼻についてついて仕方がなくて、家族を見捨てられたっていう決定打があって、社長を殺すところにつながるという。
ここの心の動き、見事な二次関数グラフがかけると思う。
ポスターの脚の複線の回収も見事でした。
最後になっちゃったんですが、チョン家の奥様、“ヤング・アンド・シンプル”ヨジョン。
めんこかった。
私は彼女の椅子の座り方が汚いのがとても好きです。
最初出てくるシーンで白い服で白い犬抱いてるのもよかったね。
あと、パンティを触った手で口覆っちゃうとことか。かわええ。
私やっぱ音楽が微妙だと映画楽しめない(こういうとこ音大卒())んですが、この映画は終始、クラッシック調の美しい音楽が印象的に使われていました。
そしてイタリア歌曲は悪夢に合うなって心底思った。
中でも、全編通しても「これは…」っていう、音楽の使い方が超おしゃれなところがありまして、ぜひご紹介させていただきたいとおもいます。
映画の最後!!回想から手紙を読み終えたギウのカットに戻ったところ!!
メジャーとマイナーの間の和音で終わるんです。音大卒()なんで詳しいこと言えないんですけど
ぞくっとしました。これはめちゃくちゃ暗示的だなと思って。
神がかり的な音楽とストーリーのリンク。
この映画は観た人によって結末の取り方が変わるんです。
分かるのは、
ギウの夢が叶うのかどうかは誰にもわからない。ただ、現実的ではない。
ということだけなのです。
2020/03/01 鑑賞。